Another View - 夏祭りの影から(page.29 バックログより)

忍(冷泉ってば、何かにつけて面白いと思ったものを拾い集めてくるけれど、まさかうちの神社の夏祭りを拾い集めてくるとは思わなかったわ)


忍(それに、あの時の青年が、今や夏祭りの縁の下)


忍(みんな、私のおかげって言うけれど、私はあの日からそんな大それたことはしていないのに)


忍(………)


忍(あの日の後悔のまま、ここを捨てるように全てをあきらめて生きてきたけど)


忍(それでもここは冷泉神社だってお母様やおばあ様に言いつけられてきた)


忍(私もそのように生きてきたけれど、もしかしたら、町の人は私の事を怨んでいたんじゃないかってずっと思っていた)


忍(明乃がもし、神社を残すことを考えてなかったのなら、私はあきらめてここからいなくなったでしょう)


忍(けれど、明乃は私の思いを大事にしてくれた)


忍(冷泉は、結局最期まで顔を見せてはくれなかった)


忍(忘れちゃったのかと思ってたけど)


忍(私の事を大切にしてくれていたのね)


忍(まったく、あの時の青年も冷泉も、そういう勝手ばかり言うんだから)


忍(私は、そんなに仏頂面に見えていたのかしら)


忍(そういえば、明乃に手紙を残していたけれど、明乃はちゃんと持っててくれてるかしら?)


忍(いや、疑うだけ野暮よね。ずっと私の事を考えていた明乃だし、今でもちゃんと私の事を思ってくれてる冷泉だもの)


―…実は、おばあちゃんから。手紙を預かっていたんです、私が―


忍(そう…明乃も冷泉も、私の事を大切にしてくれていた人)


忍(だから、この手紙が冷泉に伝わったなら。私はそれだけで幸せかな)


忍(本当に、これまでありがとう…冷泉)


忍(本当に、ありがとう…小折)

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