Another View - 忍の友人と、忍の寵愛(page.26 バックログより)
冷「本当に、よくここまでたどり着いたわね」
明(冷泉さんは、全部知っていたんですか?)
冷「夏の神様については、私も口伝で聞いた程度よ。ただ、夏が終われば記憶ごと町から消えて、夏になるとまた戻ってくる。そのことについては、私は娘の望を見て理解はしていた」
明(………)
冷「ひどい神様だって思ってる?そこはどう思ってくれても構わないわよ。私もこういう時、どうすればいいのかわからないんですもの」
冷「………いやよね、もしかしたら次の年に出会ったときには、愛を誓ったはずの相手が何も覚えていないなんて。そうなったら、人間としては、たとえ禁忌であろうとその思い出を深く残してしまいたい。そういう強い思いが、幾度となくこの町から神様の力を奪っていった。人間であるがゆえに、目の前の一人と町という世界を天秤にかけてしまう」
明(だけど…伝えることが出来る時に伝えないのは、やっぱり卑怯なんだと思います)
冷「卑怯…か」
明(それは、相手を思いやっているんじゃなくて、自分を守ろうとする事に近いと思います。だって、そのチャンスを逃して、もう何も伝えることが出来なくなったあとでは遅すぎますから)
冷「…あなた、とても達観しているのねえ」
明(これは私の言葉じゃないです)
明(これは、おばあちゃんがよく言ってたんです)
冷「忍、が…?」
明(おばあちゃんは、冷泉町の神様の昔話を聞かせてくれました。この町は神様と一緒に生きていて、それを大切にすれば幸せになれる。けれど今は神様がおやすみをしているから、起きた時には待ってあげなさい)
明(そして、神様のお話の時には“神様は伝えてくれた事を大事にするから、時にはきちんと伝えてあげなさい。大事なことを伝えないと、必ずどこかで後悔が残り続けるから”)
明(そう、優しく呟いてくれました)
冷「っ…!」
冷「忍は、そんなことを言ってくれたの?」
明(この話は、必ずしていました。今考えると、おばあちゃんも何か伝えそびれて後悔していたのかもしれません)
冷「………そう、なのかしら」
明(冷泉さん?)
冷「明乃ちゃん。もし今度時間があったら、忍の手記や冷泉神社、見学に行ってもいいかしら?」
明(それはもちろんです。神社も、神様を待っていると思います。おばあちゃんも、きっと喜びますよ)
冷「忍は…喜ぶかしらね?」
明(?)
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