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望「うーん…おはようあおとくん………ふぁ」


蒼「なんか寝坊助だな、望」


望「んう…やっぱり昨日の事が気になっちゃって、あまり眠れなかったんだよ」


蒼「そりゃあそうだよな。気にしない方が無理ってもんだ。」


蒼「どうした俺の顔なんて見つめて?」


望「………んっ」


蒼「んむっ!?お、おいっ………!」


望「えへへ、蒼人くんを驚かせちゃった」


蒼「アホか」


ぺしっ


望「うえっ!?痛いよ~」


望「でも、少し安心できた」


蒼「…そうか、それなら良かっ………いや、騙されんぞ」


望「えー」


蒼「とりあえず、今日まで休みだ、飯でも食って予定を考えることにしよう」


望「はーい」


………


咲「おはよう、朝からお楽しみね」


望「ん?」


蒼「母さん…部屋の前を通りかかったな?」 望「っ!?」


咲「アラーナンノコトカシラー?」


蒼「誤魔化すのへたくそか」


望「ぁぅ」


咲「ま、仲良きこと良いことよ、私は気にしないからごゆっくりー」


蒼「だとさ、望」


望「ううぅ…さすがに恥ずかしいよ」


蒼「なら抑えることだ。それに、我慢するのも大事だぞ」


望「はーい…」


咲「さて、蒼人は今日まで休みなんだっけ?」


蒼「ああ、明乃から何か言ってくればと思って待ってはいるんだがな」


咲「調べものだったかしら?」


蒼「一緒に付いていって驚いたよ。冷泉町って歴史が深いのな」


望「大きな本が三冊もあったからね」


咲「そうねぇ…確かに歴史は深いかもね………」


蒼「…母さん?」


咲「あぁ、ごめんなさい。さて出掛けるんなら私が送るわよ」


蒼「どうする?」


望「明乃ちゃんに聞いてみてから、もし行くな三人でどこかに行きたいかな?」


蒼「…だそうだ。母さん」


咲「わかったわ、それなら神社を一回通って出掛ける先を決めましょう。じゃあ二人も準備して」


………


望「えっ、明乃ちゃんもう出掛けちゃったの?」


夜「えぇ、今朝急に図書館に行ってくるって言って…何だか慌ててたわね」


望「珍しいね、明乃ちゃんが慌てるなんて」


蒼「………まあ、個人の事情ってものは様々だからな、仕方ないさ」


望「う~ん…残念」


蒼「じゃあ母さん、頼むよ」


咲「明宮でいいのかしら?」


蒼「あぁ。それに、もしかしたらそこらで明乃と会うかも知れないしな」


望「そっか、それで会えたら一緒に出掛けてもいいかもね」


咲「望ちゃん、たまには二人っきりで本当にデートもしてみるものよ?」


望「まぁ、それはそうだけど…」


咲「なに?何か反応が鈍いわねえ」


蒼「望、恥ずかしいなら素直に言わないとこの母さんは隅までいじり倒すぞ」


望「うぅ」


咲「つれないわね。それに蒼人も蒼人よ。たまには男気の一つでも見せてみなさいよ。こう…肩を抱くとか」


蒼「ほいよ、これでいいか?」


望「わわっ、あ…蒼人くん!?」


蒼「驚きすぎだ」


咲「じゃあそのままキスで」


蒼「断る」


望「えいっ」


蒼「んっ!?」


望「っはぁ、今度は私の番だよ」


咲「良いわねえ、青春だわねえ…」


蒼「この母親は………」



………



蒼「帰りは電車で帰るよ」


咲「はいはい、ごゆっくりー」



蒼「全く、何で当人より浮かれてるんだか」


望「でも、おかげで蒼人くんに肩を抱いてもらえたし、キスも出来たよ」


蒼「幸せそうだな…お前は」


望「なーにー?その残念な人を見る目は?」


蒼「とりあえず、どうする?」


望「どうするって?」


蒼「普通にデートをするか、もしかしたら明乃がいるかもしれないから図書館を目指すか」


望「う~ん…でも、明乃ちゃんが一人でお出かけしたのなら、邪魔しちゃ悪いかなぁ…」


望「…うん。まずは蒼人くんと二人きりで遊びたい!」


蒼「わかった、それならモールの方に行こうか。映画でもショッピングでも何でもござれだ」


望「うん!」


………


蒼「とりあえず、映画でも探してみるか」


望「また怖いのとかダメだからね」


蒼「心配するなって、今度はそんなものを選んだりしないさ」


望「蒼人くんの意地悪は知ってるからあまり信用できないなぁ………」


蒼「疑われやすいことばかりしてきたのは、なんというかすまん」


蒼「まあまだ朝だ。昼飯もおやつもまだ時間はあるからとりあえず、見て回ろう。ゲーセンにでも行けば時間も潰れるだろうよ」


望「げーせん?」


蒼「お前はゲームってしたことないよな。それならちょうどいい。そこ目指して歩き回ろう」


望「うん」


………


望「これが、ゲームセンター?」


蒼「ああ、色んなゲームがおいてる場所さ」


望「すごく賑やかだね、人と言うより機械が」


蒼「うるさいくらいにな。どれ、何かゲームをやってみるか?」


望「蒼人くんにまかせるよ」


蒼「なら…レースゲームでもしてみようか?」


望「レース?車のゲームなのかな?」


蒼「その通り。操作はほぼ車だからお試しがてらやってみればいい」


望「車は見たことあるけど操作したことはないよ?」


蒼「そういう人のためのゲームだよ」


望「わわっ!すごいすごい!本当に車を運転してるみたいだよ!」


蒼「本当に子供みたいな驚き方だな」


望「それに、何だかゲームらしいって言うか…ああっ、ぶつかる!?」


蒼「おおっ!やり方も知らないのにドリフトをやってのけた!?」


望「はぁ、何だかドキドキしたよー」


蒼「初出走で、初心者コースとは言え2着か。ビギナーズラックだけどなかなかだな」


望「えへへー」


蒼「それじゃあ今度はクレーンでもやってみるか?」


望「クレーン?」


蒼「上にあるこのクレーンでぬいぐるみとかお菓子とか、そういう景品を掴むんだよ」


望「ほうほう」


蒼「ボタンが二つあるから、最初に横を、次に縦を合わせて狙うんだ」


望「うん、やってみよう!」


蒼「なら、あの小さなハムスターのぬいぐるみを…」


望「んーと、横を合わせて…ここっ!」


蒼「じゃあ前後だな」


望「まっすぐ見てるとイマイチ見辛いよ」


蒼「そう言うときは横から覗き込んで確認すればいい」


望「…ん、ここだ!」


ウィーン…


望「やった、掴んだよ…って、あれっ!?」


望「蒼人くん、つかんだぬいぐるみが落ちちゃったよ?」


蒼「つまりそう言うことだよ。途中で落ちないように上手く運ぶところまでがクレーンゲームの難しい所なんだ」


望「うー…掴めてただけに悔しいよ~」


蒼「どれ、もう2、3回やってみるか?」


望「うん!」


………


望「やっと取れたー!」


蒼「手のひらサイズのぬいぐるみで総額は500円か。まあ自分で取れたことが嬉しいだろうから皆まで言うまい」


望「~♪」


蒼「さて、そうこうしてる内に昼だな」


望「おぅ、もうそんなに時間が経ったの?」


蒼「またフードコートに行って昼にしようか」


望「うん。今日は何を食べようかな?」


蒼「食い過ぎるなよ?」


望「私、そんなにたくさん食べないよ?」


蒼「後にクレープを食べるから?」


望「…そ、そんなことは…ないもん」


蒼「はっきり言い切れ」



………



蒼「…で、結局食後のクレープにありつくと」


望「はむっ…もちろんだよ。クレープは美味しいからね」


蒼「まあ、お前が楽しいなら何も言わんさ」


望「はむ……ところで、これからどうするの?」


蒼「これからなぁ…このまま望の服を少し見て回るのもいいが…」


望「やっぱり、明乃ちゃんが気になる?」


蒼「まあな、変な意味じゃなくて普通にな。いきなり何も言わずに飛び出したのが気がかりだ。まあ、人の事情だから無闇に聞くのも失礼だが…」


望「うん…私も気になるかな。今まで一緒に居ただけに尚のこと、ね」




望「…ねえ蒼人くん。この後ね、私、図書館に行きたい」


蒼「図書館に?」


望「うん。別に深い意味は無いけど、ちょっと本を見てみたいなぁって」


蒼「そうか、それは奇遇だな。俺もちょうど図書館のことが頭をよぎっていたんだ」


望「蒼人くん、わざとらしー」


蒼「お前が言うな。それじゃあ予定は変更だな」


望「うん!」



………



司「ごゆっくりどうぞ」


蒼「着いたな、図書館」


望「着いたね、図書館」


蒼「見渡して見る限り、明乃はいない様だが…」


望「あの本のある棚に行ってみようよ」


蒼「よし。冷泉町史は…」



明(あっ………)



望「えっ」


蒼「よう、やっぱりここにいたんだな」


明(あ、あの………えっと………)


望「私達、明乃ちゃんを心配してたんだよ?お出掛けに誘おうと神社に行ったらもういないって言われたから」


明(………そ、そうでしたか)


明(すみません。ちょっと思い立って、弾かれるようにここに来たもので…)


蒼「いや、こっちが無理に明乃を探してただけなんだ。こっちこそ悪かったよ」


明(いえ、お気遣いなく)


望「とりあえず、私達はどうする?」


蒼「そうだな………」


明(あ、よろしければ調べものの続きを一緒にしませんか?せっかく探してくれたのに、このまま帰すのも寂しいですから)


蒼「そうか、明乃が迷惑じゃなければ、望はそれでいいか?」


望「うん!また三人だね」


明(ちょうど、今から例の三巻を読もうとしていました)


明(3巻は近代史と政経史ですね)


蒼「ああ、なんか小難しいものがいっぱい書かれてるな…」


明(さ、さすがにこれは私でも中々解読が………)


望「う~ん…文字はよくわからないしその意味も全くわからないよ~」


蒼「あの古文書とは訳が違うからな」




「ん、君たちは冷泉町について調べてるのかい?」




蒼「えっ」


明(は、はい…貴方は?)


「あぁ、失礼。君らのような若者が冷泉町を調べているのに感心してね。つい声をかけてしまったよ」


明(私の家は冷泉神社ですので)


「ん、それじゃあ君は更月家の者なのかい?」


明(あ、はいそうです)


「それは失礼した。自分は忍さんに大層世話になった身だ。この場を借りて礼を言わせてもらうよ」


明(は、はぁ…どうも)


蒼「あなたも、忍さんをご存じなんですか?」


「そうだとも。おっと自己紹介が遅れたね。私は芳峰 赤穂(よしみね あこう)だ。以後お見知りおきを」


蒼「祭ヶ原 蒼人です」


明(更月 明乃です)


望「えと、冷泉・望=フリージィです」


赤「こちらこそよろしく。ところで、自分の連れを見なかったかい?」


蒼「どんな人ですか」


赤「それが…そこにいる望ちゃんと瓜二つの女性なんだが…」


望「私と、瓜二つって………まさか」



冷「あったり~」



望「わあっ!?冷泉さん!?」


冷「久しぶり…って、昨日あったばっかりか」


赤「なんだ君の知り合いか」


冷「知り合いというか…身内かしら?」


赤「なら紹介の手間は要らないな」


蒼「どうしたんですか?冷泉さんまで」


冷「ああ。この人がね、図書館を見に行きたいって言ったからお側付きとして私も同伴したのよ」


赤「そんな子供みたいな言い方はしてないだろう」


赤「言ったはずだ。蔵書の拡張と増改築のために視察に来た、と」


冷「ふふっ、そうだったわねー」


明(この図書館、新しくなるんですか?)


赤「あぁ、少し先の話だけどね。今、議会で文化推進の予算会議をしていた所で、その為に視察に来たんだよ」


蒼「議会って…じゃあ、芳峰さんは市議会議員………?」


赤「いや?そうではなく………」


司「あの、芳峰市長。市役所からお電話を預かってるのですが………」


赤「芳峰市長は今は留守にしていると伝えてくれ」


明(し、市長さんなんですか!?)


赤「やれやれ、もう少し謎のおじさんで居たかったのだが…」


冷「私が来た時点で、ただのおじさんではありませんよー」


蒼「けど、どうして冷泉さんと市長が一緒に?」


赤「まあ合縁奇縁と言う奴だ」


赤「この人とは忍さんとの伝で出会ってね。それからずっと私のサポートをしてくれているんだ」


冷「と言っても、ただお側についてるだけですけどね」


望「何だかすごい繋がりになっちゃったね…」


蒼「ああ、世間の狭さを感じてるよ」


赤「そうだな…冷泉さん。ちょっと司書と話をしてくるから、知り合いの皆さんと歓談をしておいてくれ」


冷「歓談なんて…ここが図書館なの、忘れてませんか?」


赤「君が覚えてるのだから問題はないだろう?」


冷「はいはい、じゃあ待っていますね」


………


蒼「冷泉さんはいったい何者なんですか?」


冷「さあ?私もよくわからない内に赤穂さんの側についていますから」


明(…そう言えば、蒼人さんと望さんはご存じのようですが、この方は?)


望「うーんと…私の…えっと………」


冷「初めまして」


冷「あなたが冷泉神社のお孫さんなのね。忍さんはいい子に恵まれたみたいね」


明(貴方も、おばあちゃんをご存じなんですか?)


冷「まあね。多分、冷泉町に古くからゆかりのある人はみんな忍さんを知っているはずよ」


明(おばあちゃん、そんなに有名だったんですか)


冷「そんなあなたは、を知りたくてここに来た風かしら?」


明(えぇ、まぁ…)


冷「純粋ね。健気なことはいいことよ。でも、時には知ることに歯止めをかけた方がいいときもあるものよ?」


明(えっ)


冷「………ふふっ」



………



赤「すまない、ずいぶんと話し込んでしまった」


冷「まったく、もう図書館の閉館時間じゃありませんか」


蒼「もうそんな時間か」


望「いろいろ話し込んじゃったね。図書館なのに」


明(レポート作業は進みませんでしたね)


赤「それならちょうどいい、その本を借りるかい?」


明(………へ?)


赤「今しがた、図書館の改装の話を煮詰めていてな、そのついでに私の権限と頼みと言うことで君に……いや、建前的には冷泉神社に貸与するように約束してもらった」


冷「あらあら、職権乱用はいけませんよ?」


赤「歩む若者の手助けといってくれないか?」


望「すごーい…」


明(でも、ご迷惑に………)


赤「より新しいものを改装の時に所蔵するから、古い方を貸与できるようにすると言うだけだ。それに、冷泉町史を手に取るのは君達だけだと司書の方も言っていた。なんの問題もないさ」


冷「相変わらず、親譲りの破天荒ですね」


明(あ、あのっ………どう言っていいかわからないのですけど………ありがとうございます!)


赤「いやいや、この冷泉のように冷泉町について真剣に知ろうとしてくれる人が他にもいることに感銘を受けたんだ」


赤「冷泉町はの多い町だからな」


蒼「謎と…」


望「災難…?」


赤「まあ、調べる内に知っていけばいいことだ。今は興味の赴くままに調べていってくれ」


冷「さて芳峰市長、そろそろ私達は帰りましょうか」


赤「あぁ。それじゃあ若者たち、機会があったらまたどこかで」


明(は、はい)


………


望「行っちゃったね」


明(なんだか物凄いことに巻き込まれたような気がします)


蒼「俺もだ、雲の上の事を間近に感じてる気分だよ」


望「でも、良かったね明乃ちゃん」


明(はい、話が急すぎて夢見心地ではありますが、これで細かく調べることができます)


明(結局、あの方…冷泉さんと言ってた方は誰なんですか?)


蒼「あー、信じられないと思うが、望の祖母に当たる方だそうだ」


明(へ?)


望「私の…?その、おばあちゃん…みたい」


明(話が全く見えてきません。だってどう見てもお姉さんじゃないですか)


望「やっぱり明乃ちゃんも、私を妹だと思うんだね…」


明(いえまぁその………でも、そんなに歳が離れているとは思えません)


蒼「だよなぁ。どう見ても、良くて二十代って感じだよな」


望「私もその話しにずっと混乱はしてるんだけどね」


蒼「さて、一段落ついたところで、明乃はこれからどうするんだ?」


明(そうですね、せっかくお借りしましたから、家に帰って改めて読み明かしたいと思います。色々と、気になることもありますので…)


蒼「なら望、俺達も明乃について帰るか?」


望「うん?」


蒼「ほら、冷泉町史は運ぶのが大変だろう?どうせ途中まで同じ道なんだ。手伝うくらいいいんじゃないか?」


望「なるほど!」


明(あ、えっと…ありがとうございます)


蒼「それなら、とりあえず明乃から司書の方に話をしないと」


明(………とりあえず、芳峰市長から話は伺っているのでと言って………)


望「その赤いカードは?」


明(その…特別貸与カードだそうで。ごく一部の方だけが持っているものを頂きました)


蒼「どんだけだよ、芳峰市長」


明(これで冷泉町史を借りることができるそうで)


蒼「じゃあ、持っていくか」


明(はい)


望「やっぱり重いね、一冊だけだけど」


蒼「重いな。物理的にも気分的にも」


明(そうですね、私はどちらかと言うと気分の方が重いです)



………



明(今日はありがとうございました)


蒼「いいってことよ」


望「また一緒にお出掛けしようね」


明(はい、ぜひ………)


夜「あら、大層なものを借りてきたのね」


明(お母さん、ただいま)


夜「ところで明乃、市長さんを名乗る人から電話があったわよ?」


夜「怪しいから切っちゃったけど…何か心当たりあるかしら?」


蒼「あー…」


望「あー…」


明(あー…)


明(無いことはない…かな?)


蒼「それじゃ、俺達はこれで帰るよ」


明(あ、蒼人さんも望さんも、本当にありがとうございました)


望「それじゃあおやすみ~」


蒼「今までで一番濃密な休みだった」


望「市長さんと冷泉さんだからね…」


蒼「世間は狭いな。こうやって知り合い同士が脈脈と繋がってるんだから」


望「あはは…でも、市長さんと一緒にいられる冷泉さんって、本当に何者なんだろう?」


蒼「謎が深まるな」




冷「ひょっとして私の話をしているの?」




望「うわぁっ!?」


蒼「冷泉さん、いつの間に」


冷「あの後すぐに赤穂さんと別れてこっちに来たのよ。なぁに?私の話?」


蒼「本当に貴方が謎多い人物だと話をしていたんです」


冷「あら、嬉しいわ」


冷「夜も近いし、帰りながらお話ししましょうか」


望「あ、はい」


蒼「でも、市長と付き合いがある…と言うより市長の秘書みたいになってましたけど」


冷「赤穂さんの秘書は別にいるわ。私は本当にお側に付いてるだけ」


蒼「なら余計に謎ですよ」


冷「赤穂市長、今年のお祭りも視察に来ていたわね。私が発破をかけたからね」


蒼「どういう事ですか?」


冷「いやぁね、西泉のお祭りって元々冷泉町のお祭りだったから、どこかで冷泉町のお祭りの復興をしたいって赤穂さんにお願いしてるのよ」


望「冷泉さんも…?」


冷「やっぱり、お祭りは冷泉町でやらなくちゃ、ね」


蒼「つまり、そんな冷泉町の為に冷泉さんは市長のお側つきをしていると?」


冷「そうねぇ~、私的にはそれであってるけど、赤穂さんはそうじゃないみたい」


望「それって…?」


冷「赤穂さんは、冷泉町の逸話をどうにかして終わらせたいんじゃないかしら?」


望「逸話…?」


蒼「もしかして、冷泉町の歴史的な気象ですか?」


冷「えぇそうね…もっと言えば、それを起こしている冷泉の神様のお話、かしら?」


望「かみ、さま?」


冷「…さて、お家に着いたわね」


望「あっ」


冷「また積もるお話は今度にしましょうか」


蒼「どうやら、冷泉さんとは気軽に出会えそうですしね」


冷「うふふ、私は気軽な人ですよ」


望「あ、あの…」


冷「望ちゃんも、今をたくさん楽しんでね」


冷「私は、あなたが"どちらに向かっても"応援するから」


望「どちらに………?」


冷「…じゃ、お休みなさい。お二人ともお元気で~」


タッタッタッ………


望「行っちゃった…」


蒼「油断も隙もないな、冷泉さん」


望「そうだね」


蒼「………ほら」


望「わっ、蒼人くん!?どうしたの急に私を引き寄せっ………」


蒼「まーた不安になってるだろ?」


望「ぁぅ、それは…」


蒼「お前にしょんぼりは似合わん」


望「蒼人くん………」


蒼「デートの締めくらい、笑っておけ」


望「じゃあ、んっ……」


蒼「………はいよ」


望「んむ……んっ…はぁっ……ん……」


望「…えへへ」


蒼「そうやって笑っている方がいいだろ?」


望「うん。ありがと、蒼人くん」



Date-8/14

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