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望「おはよう、蒼人くん!」
蒼「おう、元気だな」
望「今日お休みだよね。お出掛けできるんだよね」
蒼「ん、あぁ。お前が行きたいならどこへでも行こうじゃないか。宇宙とかじゃない限り」
望「さすがに宇宙には行かな………あ、そうだ」
蒼「なんだ?」
望「ねぇ、昨日行けなかった神社に私も行きたいな」
蒼「なんだ、
望「それも楽しいけど、私も明乃ちゃんとお話ししたいから」
蒼「お前がそう言うなら、行きたい所に行くよ」
望「うん!それじゃあ準備するね」
蒼「…律儀と言うか、ばか正直というか」
………
望「おまたせ!」
蒼「ワンピース慣れしてると、着替えるだけで大人っぽく見えるから不思議だ」
望「それ、ワンピース来てるいつもの私が子供っぽいってこと~?」
蒼「その通り」
望「もー!あっさり答えないでよー!」
蒼「一応誉め言葉なんだからいいだろ」
望「なんかスッとしない」
蒼「子供だとか言い出したのはお前だ」
望「ぐぬぬ」
蒼「それに、可愛くなってるのは間違いないと思うぞ?」
望「ぁぅ…急にそんなナチュラルに言われるとなんだかむず痒いよ~」
蒼「素直な感想に失礼な物言いだな」
望「うん…ありがとう」
蒼「さて、それじゃあ行くか」
望「自販機までしか行かなかったから、冷泉町の中に入るのは久しぶりかも」
蒼「そうか、いつの間にか大都市になってたりしてな」
望「それはどんな浦島太郎かな」
………
明(昨日に引き続きどうもです、蒼人さん)
蒼「やぁ」
明(そして、お会いするのは2回目ですね、望さん)
望「こんにちは、明乃ちゃん」
蒼「望がどうしても直接お礼をしたいそうで」
望「私が作った煮物おいしかったかな?」
明(今朝いただきましたよ)
明(なんだか優しい味がしました。もちろんいい意味で、ですよ)
望「ほんと?ならよかったよ~」
明(服、かわいくて素敵です)
望「そう?蒼人くんとお出掛けしたときに買ってもらったんだよ」
明(それはそれは、蒼人さんも奮発しましたね)
蒼「いいや、買ったのはその時偶然ショッピングモールで居合わせたうちの会社の部長だよ」
明(………)
明(あの、筋肉が服を着てるような方ですか?)
蒼「よく臆面もなく言えるな」
蒼「ともかく、しかも見繕ったのもあの人だ」
望「すごく素敵な服を選んでくれたんだよ」
明(よ、世の中って広いんですね…)
蒼「あぁ、しみじみ感じるよ」
望「そういえば神社の境内、綺麗にしてるんだね」
明(はい。神様はいなくともここは神社ですから、私が常々掃き掃除をしています)
望「えっ、神様いないの?」
蒼「俺もその話は聞いたな」
明(はい。おばあちゃんは私にそう言い聞かせてくれました)
明(ここは神様のいない神社だ。いなくていい神社なんだ…って、聞くたびに不機嫌な顔をする私に諭すように話してくれました)
望「明乃ちゃんは、神様はいると思ってるの?」
明(泣いて両親に嘆願するくらいにはそう思ってます)
望「明乃ちゃん…」
蒼「ん?どうした望」
望「ううん、なんでもない。けど、神社なのに神様がいないってさびしいよね」
明(それには同意見です。やっぱり、神様にはいて欲しいです)
望「………私みたいな人が、神様だったら、いいのかな…?」
蒼「………望?」
明(望…さん?)
…冷泉、町の神様………風習、神事と………きん
蒼「おい、望?」
望「っ!わ、私…今何を………?」
蒼「落ち着け、なんかうなされてたみたいだぞ」
望「うん、ごめんね心配かけて」
蒼「気にするな」
明(お二人はこれから何処かへお出掛けですか?)
望「んー」
蒼「特に決めてないな」
望「私が明乃ちゃんに挨拶したくてここに来たけど」
蒼「…なぁ」
望「…ねぇ」
明(もし、これから明宮へお出掛けする用事があるのでしたら、私も一緒についていって………その、いいでしょうか?)
望「それいいね!私も明宮には行きたかったし!」
蒼「まあ…俺は構わんぞ。元々最初は明宮の予定だったし」
望「じゃあ決まりだね」
明(それなら、私もお出掛けの準備をしますね。あ、お二人とも家に上がって待っててください)
蒼「それなら、お邪魔させてもらおうかな」
望「お邪魔しまーす」
夜「あら、昨日はどうも」
望「こんにちは」
夜「あらあら、蒼人さんのお友達?」
蒼「こいつはうちの居候です」
望「
夜「望ちゃんね、明乃の母の
蒼「そういえば、明乃の母親の名前、今はじめて知った気が…」
夜「あら、私紹介してませんでしたかね?ほほほ」
………
明(お待たせしました)
望「あっ、ワンピース!」
蒼「普段の望みたいだな」
明(ちょっと迷ったんですが、シンプルなものを選びました…あの、どうでしょう?)
望「うん、なんだかお嬢様みたい」
蒼「どっかの誰かみたいに子供っぽくない」
望「あおとくん?」
夜「それじゃあ明乃をよろしくお願いします」
明(お願いされます)
蒼「お願いされますは俺の台詞だ」
望「じゃあ行こっか、明乃ちゃん!」
明(はい。蒼人さんも、さあ)
蒼「無視かい」
夜「蒼人さんも、隅に置けませんね」
蒼「一人は自分の娘でしょうに」
………
ガタンゴトン…
蒼「明宮にはよく行くのか?」
明(たまにという程度ですね。図書館に行ったのも、学校の課題ついでという理由もありましたし)
望「かだい?」
蒼「望には宿題と言ったほうが分かりやすいか?」
望「あぁ、それなら知ってるよ」
蒼「で、自分の調べものと言うわけか」
明(自分から明宮に行くのはここ何回かが初めてかもしれません)
蒼「誰か友達とかと行ったことは?」
明(その…それも含めて、初めてです)
蒼「あー…」
望「??」
明(クラスでは普通に話すんですけど、気がおけない友人というはいないので)
蒼「そういえば、クラスメイトを家に案内したことなかったって言ってたな」
明(案内しないのは私なんですが、逆にクラスメイトは、私が神社の娘と言うことでやや敬遠している雰囲気もあります)
蒼「難しい年頃ってやつだな」
望「んー??」
蒼「望は楽そうでいいな」
望「へっ?」
明(けど、素直な所は嫌いじゃありません)
望「えっ、私が今褒められてるの?」
蒼「明乃は褒めてるな」
明(もちろんです)
望「蒼人くんは?」
蒼「もちろんほめてるよ」
望「目が合ってないんだけど?」
蒼「しかし悪いな、俺から振って明乃にそんな話をさせちまったよ」
明(いえ。今は今ですから、望さんや蒼人さんとお出掛けしてる今が楽しいので気にしてません)
望「もちろん、今日に限らずいつでも呼んでよ。私はいつでも大丈夫だから!」
蒼「まあ…俺も休みの日なら、な」
明(ありがとうございます)
明(おや、そろそろ明宮に到着しますね)
蒼「じゃあ、降りるか」
望「三人でお出掛け、楽しみだね!」
蒼「お前は本当に気楽そうだな」
望「褒めてる?」
蒼「ホメテルヨー」
望「だからなんで目が合わないのかな?」
………
明(さすがに夏休み、人の往来が激しいですね)
蒼「世間は夏休みかぁ…」
望「蒼人くんは夏休みじゃないの?」
蒼「うちは…ほら、他人が休んでるときが一番忙しいから…」
明(お仕事って、大変なんですね)
蒼「若い明乃に悟られると、なんか泣けてくるよ」
蒼「いかんいかん。今こそ明乃が言ったばかりだ。今は今ってな」
望「そうだよ。今日は三人でお出掛けに来たんだから、三人で楽しもうよ!」
明(それで、何処へ?)
蒼「とりあえず涼を求めてショッピングモールだな。望、ほら」
望「あ、うん」
明(手、繋ぐんですか?)
蒼「あぁ、こいつは迷いやすいからな」
望「ここは広いからねー」
明(………)
蒼「明乃も繋ぐか?」
明(あ、いえ。私は大丈夫です。迷うことは多分ないので)
望「…あれ、私もしかして子供みたいかな?」
蒼「………」
望「何か言ってよ~」
明(望さんって、可愛い人ですね)
蒼「だろ」
望「流れ的に褒めてる気がしないよぅ…」
………
明(服って、色々ありますね)
蒼「お前も望と同じような反応なんだな」
明(おしゃれとか、着飾るとか、あまり興味がなかったものですから)
望「私もあまり興味はなかったかな」
明(今着てる服の着心地がよくて)
望「ついつい着回して」
明(気がついたら)
望「同じ服しか着てなくて」
……ぎゅっ!
望「似た者同士、だね」
明(はい。通じた気がしました)
蒼「そういうのを世間ではものぐさと言うんだ」
明(そんな単刀直入に言わなくても…)
望「こだわりがないと言ってよ」
蒼「なくていいのか?こだわり」
明(でも、一度目を通すと興味が出てくるのもわかります)
望「私は蒼人くんの所の部長さんされるがままだったけどね」
蒼「おろおろしながら着せ替え人形と化してた望はユニークだった」
望「もー…」
明(見たかったです)
望「もー…」
望「…あっ!明乃ちゃん!」
明(はい?)
望「クレープ食べたことある?」
明(へっ?えっと…見たことはありますが食べたことは…そういえばありませんね)
望「それならさ、蒼人くん!」
蒼「へいへい。じゃあクレープでも食べに行こうか」
………
明(ここは…いわゆるフードコートですか?)
蒼「あぁ」
望「ほら、あそこのお店!クレープがとても美味しいんだよ!」
蒼「落ち着け」
明(望さんはクレープが好きなんですね)
蒼「主な理由は未体験の美味しいものだったからなんだけどな」
蒼「多分こいつにとっては、クレープもショートケーキもワッフルも、同じ理由で同じように好きになるんだと思う」
望「人をそんな何でもかんでも好きになると思わないでよ」
望「………」
蒼「…なんだ?何か言いたげだな」
望「…わ、ワッフルってなに?」
蒼「ほら」
望「わ、私だってしょーとけーきは知ってるよ。イチゴが乗ってるケーキでしょ!」
蒼「食べたことは」
望「ないけど…」
明(甘いもの、あまり食べたことがないんですか?)
望「うん…嫌いな訳じゃないんだよ。ほんとにただ食べたことがないだけで」
蒼「なんか、ごめんな」
望「その気遣いはうれしくないよ」
明(それなら、食べたことの無いものを食べてみませんか?)
望「食べたことの、ないもの…」
明(蒼人さん、クレープの隣にワッフルのお店があったからワッフルの話をしたんですよね)
蒼「よく気づいたな」
明(ワッフル、私も気になってたので)
望「ワッフルって甘い?」
明(甘いですよ。クレープとは趣の違うスイーツです)
蒼「となると、今日はワッフルだな」
望「うん!美味しいものは大好きだからね」
蒼「じゃあ、三人で行こうか」
………
望「んー!ちょっとさっくりしてて、柔らかいクッキーみたいだよ」
蒼「なかなか店で売ってるワッフルって見かけないから新鮮だな」
明(ワッフルってお店で売ってるものじゃないんですか?)
蒼「俺の中では、おしゃれな主婦がワッフルメーカーで作ってるイメージだ」
明(それはイメージが偏りすぎでは…?)
望「ワッフルの間にクリームとイチゴが挟まってて、味はクレープに似てるねー」
蒼「やっぱりクレープ基準なんだな」
望「おかしいかな?」
蒼「いや、お前が幸せなら何でもいいよ」
望「どうしてそんなぞんざいなのかなぁ」
明(印象深い物があるとそうなりますね)
望「明乃ちゃんのは、味が違うみたい?」
明(私のはクルミとメープルシロップです)
蒼「俺はビターチョコレートだ」
望「三人とも違う味っぽいね。じゃあさ!せっかくだから食べ比べしてみない?」
蒼「はぁ…」
明(いいですよ。私も望さんのそれを味見してみたいです)
望「もちろん蒼人くんも!」
蒼「まぁ、構わんが」
明(へっ………あっ)
蒼「なぜ俺を見る」
明(いえ………なんでも)
望「蒼人くん蒼人くん!」
蒼「あーはいはい、少し割ってやるから待て」
望「割らなくても……はい」
明(!?)
蒼「また、か」
望「はい、」
蒼「お前こういうときは強引だよな」
蒼「……あぁ、お前が好き甘酸っぱいやつだな」
望「でしょ!それじゃあ蒼人くんのも……あむっ」
蒼「割ると言っただろうに」
望「待てなくて」
蒼「子供か」
明(っ………)
蒼「すまんな明乃、望はこういう感じなんだよ」
明(そ、そうですか…じ、じゃあ………)
明(………どうぞ)
蒼「お前もかい」
望「後で私にも少しちょうだい」
明(もちろんです…なので蒼人さん、早くしてください)
蒼「責められるのは俺なのか」
望「あおとくーん、はーやーくー」
蒼「わかったよ」
明(っ………!)
蒼「望のよりはさっぱりしてるな、いや匂いはさすがにメープルシロップだが」
望「じゃあ、私もだね」
明(は、はい………)
蒼「恥ずかしくなるんならしなけりゃよかったのに」
明(待たせた蒼人さんが悪いってことにします)
蒼「不条理この上ないな」
………
望「ワッフル、美味しかったよ!」
蒼「喜んでもらえて何よりだ」
明(それで、これからどうするんですか?)
蒼「来ておいてアレだが別に大した用事はないからな」
望「お昼は過ぎちゃって、さっきワッフルを食べたばっかりだし」
蒼「考えたら昼飯がワッフルって不健康だよな」
明(あのっ、それなら私、個人的な用事なんですけど文具屋に行きたいです)
蒼「文具屋か、何か買い足しか?」
明(はい。色々消耗しているので)
望「文具屋って、鉛筆とかそういうのを売ってるお店かな?」
蒼「そうだな。今は文房具も数が多いから、お前にとっては目新しい物もあるだろう」
望「それじゃあ行ってみよう!」
………
望「おー、すごく広いよ!」
明(こんなに広い文具屋は始めて見ました)
蒼「案内看板に従って来てみたが、これまた目移りしそうな店だな」
明(どうやら書店と併設になっているようです)
望「文房具ってこんなにたくさんあるんだね」
蒼「学校向けの文具から離れて久しいから俺も新鮮だ」
明(シャープペンの替え芯と、あとボールペンが数本)
蒼「一度にそんなに買うのか?」
明(黒のボールペンの消耗が早いので)
蒼「それ、仕事してる俺らが言うセリフだと思ってたよ」
望「あっ、可愛いシールがあるよ」
蒼「こっちは完全に小学生だし」
蒼「隣に本屋があるから文具のついでに本も買えるわけだ」
明(そちらも後で見てみましょうか)
蒼「そうだな、適当に回るのも面白いかもしれん」
望「本ってあまり読んだことないなぁ」
蒼「本になりそうな人となりをしてるのにな」
望「もぅ、明乃ちゃ………」
明(………)
蒼「明乃が本を立ち読み始めて床に根を生やしてる」
望「明乃ちゃんって本がすごく好きなんだね」
蒼「世にはそういうのを本の虫と言うそうだが、今の明乃はまさにそれだな」
望「でも、なんだかページをめくるのが早いよ?」
蒼「ほっといたら読み尽くしそうだな。あ、店員が見てる」
望「大丈夫、かな?」
………
明(すみません。気になった本があったのでつい読み込んじゃいました)
蒼「気にしなくていい。どうせまだ3時だからな」
明(それに、アイスティーまで奢っていただいて…)
蒼「学生に払わせるつもりはないよ」
望「ここは、フードコートとはちょっと違うね」
蒼「ショッピングモールだからな、こうして店と店の合間にカフェがあることが多いんだよ」
明(ここって名前は有名なカフェですよね)
蒼「そうかもな。俺もテレビとか流し見だから流行には疎いし」
望「私も最近ようやくテレビを見るようになったし」
明(お二人とも変に似通ってますね)
望「似てるって、蒼人くん」
蒼「がーん…だな」
望「そこまで嫌なの!?」
明(あまり望さんで遊ばない方がいいのでは)
蒼「明乃もわかるようになってきたか」
望「遊んでたの!?ひどいよ~」
望「やっぱり私よりも蒼人くんの方がいたずら好きだよ」
蒼「いたずらはしてないさ。ちょっと意地悪をしてるだけで」
望「どっちでもひどいよ」
明(それだけ蒼人さんは望さんの事を気にかけてるんですよね)
蒼「んー…まあな」
望「えっ、そうなの」
蒼「訳あって居候してたり、自分の事がよくわかってなかったり、そういう不安しかない状況に置かれてるお前を、放っては置けないからな」
望「蒼人くん…」
明(大切にしているんですね)
蒼「そうだな、こいつが来て俺も楽しいからな」
明(蒼人さんは、望さんの事が好きですか?)
望「好…き………」
蒼「………」
望「蒼人くん………?」
蒼「…いや、今は言わないでおくよ」
望「あ………」
蒼「でも、同じ家に住んでて楽しいとは思ってる。嫌だと思ったことはないさ」
望「あ…うん」
明(………蒼人さんは、やっぱり意地悪な人ですね)
蒼「かもな」
…そんなこと言われたら、私も
蒼「ん?」
明(さて、休憩も終わりましたし、これからどうしますか?)
望「どうしよっか?」
蒼「そうだなぁ…何かアクセサリーでも見てみるか?」
蒼「二人とも、服の興味もそうだが飾り気もないからな」
望「アクセサリーかぁ、たしかに付けたことはないかな」
明(同じくです)
蒼「なら行ってみよう、そうすれば時間も丁度いいくらいになるだろうし」
望「うん!」
………
望「あっ、蒼人くん!」
蒼「ん?ブレスレットか」
望「これ!」
蒼「はぁ」
望「…だめ?」
蒼「買って欲しい、と?」
望「えと…」
蒼「わかったよ、この間は部長にしつらえてもらったから、今度は俺からのプレゼントだ」
望「っ!あ、ありがとうっ!」
蒼「っと、これ両手用の2個セットだな」
望「そうなの?私は片手でよかったんだけど…」
蒼「んー………」
望「そうだ、明乃ちゃん!」
明(はい?)
望「私とお揃いのブレスレット。どうかな?」
明(わ、私ですか?それなら買ってくださる蒼人さんに…)
蒼「女性向けのブレスレットが俺の腕にはまるとでも?」
明(あ、あぁ…なるほどです)
望「だから、時々気の合う私たち二人で、同じものを付けてみようよ!」
明(私は構いませんが…蒼人さん、いいんですか?)
蒼「気にしなくていいよ。どうせなら明乃にも…って言おうとしてたし」
明(そう、ですか)
望「ほら!お揃いだよ!」
明(は、はい。ありがとうございます)
蒼「お前の喜びが250円で助かる」
望「言い方がひどいよー」
蒼「ペアで500円の半分」
望「変わってないよ~」
………
ガタンゴトン……
明(今日は本当にありがとうございました)
蒼「何だかんだで付き合いが厚くなった訳だし、馴染みの縁ってことで」
望「すぅ………すぅ………」
明(望さん、すっかり眠っちゃってますね)
蒼「色々疲れたんだろう」
明(やっぱり、望さんは可愛い人です)
明(蒼人さん。望さんの事は好きですか?)
蒼「さっき言った通りだよ。それに、もしこいつを本気で好きになっても、こいつは居候だからな。いつ居なくなるかわからない」
明(クール、なんですね)
蒼「でもこいつを別に嫌いじゃない。それは間違いないさ」
明(あ、蒼人さん!)
蒼「おおぅ、どうした急に」
明(…私、望さんや…あ、蒼人さんの事、もっと知りたいです)
蒼「俺の事?」
明(その…望さんは、蒼人さんをとても信頼してるように見えるので、だから)
蒼「知りたくなったと?」
明(だめですか?)
蒼「だめじゃないさ。こんな人間でよければご自由にどうぞだ」
明(………ふふっ)
蒼「おかしかったか?」
明(人並みには)
明(…それじゃあ、そうさせてもらいます)
明(………それと、蒼人さん)
蒼「今度はどした?」
明(私も少し疲れたので、ちょっとだけ肩を借りてもいいですか?)
蒼「こんな肩でよければ」
明(はい………)
………
明(それじゃあ、今日は本当にありがとうございました)
蒼「またちょくちょく顔を合わせよう」
明(はい。それと夏祭り、期待してますよ)
蒼「そうだな。頑張るよ」
明(じゃあまた)
タッタッ………
蒼「さて、担いだ望を部屋に運んで…」
望「…明乃ちゃん、素直だね」
蒼「起きてたのか」
望「電車の中からずっとね」
蒼「寝たふりか?」
望「明乃ちゃんが話しづらそうだったから」
蒼「聞いてたのか」
望「蒼人くん、明乃ちゃんは好き?」
蒼「………」
蒼「俺がお前の事をどう思ってるかを聞いてるという前提で話すと、お前と何ら変わらないよ」
望「"居候"の私をそう扱うように?」
蒼「そうだ。お前の場合は居候だから、明乃の場合は神社の娘で高校生だから。そんなスタンスでお前と明乃には顔を合わせてる」
望「そう、なんだ…」
蒼「気を悪くしたか?」
望「ううん。蒼人くんが私や明乃ちゃんを大事に思ってくれてるのはわかるから」
蒼「……目が覚めたんなら、降りるか?」
望「このまま部屋まで運んでくれると、嬉しいかな?」
蒼「わがままだな」
………
すぅ…すぅ…
蒼「さて、望はまた寝ちまったし、俺は軽く食べられるものでも準備するか」
ピロ~ン♪
蒼「ん、着信だ。はい………」
蒼「…あぁ、母さん」
蒼「そうか、夏休みだからな。父さんは予定は…立ってないか」
蒼「…そういえば、うちに一人居候が増えたよ」
蒼「…声がでけぇよ。ちょっと訳ありで預かったんだ」
蒼「あぁ、名前が望って言って………」
Date-07/23
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