Chapter.2
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望「行ってきまーす」
蒼「誰もいないがな」
望「言ってみただけだよ」
蒼「それと、ちょっと寄りたいところがあるんだ。
望「逆って…
蒼「あぁ。昨日の煮物をいれてた容器を
望「
蒼「いや、この容器の持ち主は
望「えっ!?蒼人くんそんな人と知り合いなの!?」
蒼「ちょっとした、な。お前は
望「うん、まあ…」
望「と言っても、私は
蒼「つまり、見たままのイメージしかない、と」
望「引っ掛かる言い方だけど間違ってないよ」
望「でも、神社のそばのバス停には………ほんとに、いろんな意味でお世話になったかな」
蒼「あぁ………」
望「…いつか戻るのかな、元の暮らしに」
蒼「………さて、神社に着いたな」
望「うん」
明(あっ、蒼人さん)
蒼「やぁ、昨日の煮物美味しかったよ」
明(ありがとうございます)
蒼「で、タッパーを返しに来たんだ」
明(急がなくてもよかったんですが、どうも)
明(………そちらの女の子は?)
望「あ、初めまして。私は…」
………
蒼「さて、それじゃあここからは街行きだな」
望「うん」
蒼「何か目新しいものを探すか」
望「私は出来ればもう一度クレープを食べたい」
蒼「おまえクレープに盲目過ぎやしないか?」
望「だって、あんなに甘くてふわふわした食べ物初めてだったもん」
蒼「世間知らずのお嬢様的だな」
望「でも、間違ってもないからね。冷泉町から出たことなかったし、色々初めても多いし」
蒼「…まあな」
望「だから、そんなところは蒼人くんに感謝してるよ」
蒼「そりゃどうも。ほら、切符だ」
―――
望(初めまして、
明(冷泉、望………)
蒼(ん?どうした?)
明(あっ、いえ。何でもありません。私は
望(うん!よろしくね明乃ちゃん!)
蒼(どっちか年下なんだか…)
明(お二人は………えと、デートなんですか?)
蒼(俺は違うと思ってる)
望(私はどっちでも楽しいからどっちでもいいかなって思ってるよ)
明(適当なんですね)
蒼(そんな関係だからな)
望(色々訳アリだからねー)
蒼(訳があるのはお前だけだ)
明(とにかく、入れ物はありがとうございました。また折を見て何か持ってきてもいいですか?)
蒼(それはありがたいが、あまり気にしなくてもいいぞ)
明(いえ、神社の事をお話しできる間柄として、色々出来ればと思っているので)
望(とても美味しかったよ!)
蒼(…なら、またその時はごちそうになるよ)
望(蒼人くん、電車は大丈夫?)
蒼(おっと、そろそろ行くか。じゃ、またな)
明(いってらっしゃいです)
―――
蒼「…明乃にとっては、
望「ん?蒼人くんどうしたの?」
蒼「いや。次はどんなお裾分けを用意する気なのかと、な」
望「蒼人くん食いしん坊」
蒼「だまらっしゃい。どちらかと言えばお前の方が期待してるんじゃないのか?」
望「まあ、ちょっとはね。でも今は街だよ!」
蒼「…そうだな、あと数分だな」
望「また部長さんに会ったりするかな?」
蒼「それは………幸か不幸か悩むところだな」
………
望「着いたー!」
蒼「人はそんなに多くないか?」
望「でも、お家の近くよりずっとたくさんだよ」
蒼「そりゃ片田舎と比べればそうだろう」
望「今日は人に酔わないようにしないとね」
蒼「そうだな」
望「蒼人くん、はい」
蒼「ん、手?」
望「この間みたいに手を繋いで案内してくれると、嬉しいな…って」
蒼「…はいよ」
望「ふふっ」
蒼「楽しそうなこった。とりあえずちょいと服でも見て回るか、その後でまたフードコートに行けばちょうどいいだろう」
………
望「お洋服いっぱいだね」
蒼「白いワンピース一辺倒のお前にはどれも珍しい代物だろう」
望「そうだね、私が見たことあるのは自分のワンピースと学校にいく女の子達の制服ばかりだったから」
蒼「学校…お前、学校には行ってなかったのか?」
望「うーん、言われてみると行った記憶はないなぁ…」
蒼「となると…学友とか同級生と言ったものも期待できない訳か」
望「そうなるね」
蒼「何かヒントでもあればいいんだが」
望「うん…」
蒼「おいそれと手掛かりが湧き出てくるのを待つしかないか」
望「ねぇ蒼人くん」
蒼「なんだ」
望「私の探し物はまた今度にして、今日はお出掛けを楽しみたいな」
蒼「………あっ」
望「ね?」
蒼「…わかった。そう言うのなら存分に外出を楽しもう」
望「ありがとう、蒼人くん」
蒼「こっちこそすまんな」
………
望「やっぱりクレープは特別美味しいよ~」
蒼「幸せそうだな」
望「このためのお出掛けと言ってもいいくらいだもん」
蒼「太るぞ」
望「ぐ…や、やっぱり蒼人くんはデリカシーがないよ」
蒼「今日は人に酔うことはなかったな」
望「少し慣れたからかな?」
蒼「そうだ、お前は映画とか見たことあるのか?」
望「えいが?」
蒼「大きな画面と迫力ある音で映像を楽しむって趣味だよ。このショッピングモールに映画館があるから色々見ることが出来るんだが…」
望「想像はできないけど、なんだか面白そうだね」
蒼「食べ終わったら、何を上映してるのか見に行ってみるか」
望「いいよ。蒼人くんは楽しいことを色々教えてくれるから、私は蒼人くんに付いていきます」
蒼「お前、忠犬みたいだな」
望「それは例えが酷いよ」
………
望「ね、ねえ…蒼人くん」
蒼「色々やってるんだな」
望「蒼人くんてば」
蒼「せっかくだから何か見て時間を潰すのもありだな、今から二時間程度なら、ちょうど夕飯だしな」
クイックイッ
望「聞いて。ねえ聞いてよ蒼人くん」
蒼「…なんだ?」
望「なんだか、おどろおどろしい看板が目立つんだけど…」
蒼「あぁ、今日はホラー特集らしいな」
望「ホラーが何なのかは知らないけど…嫌な予感しかしないよ」
蒼「そんなことはない。夏を涼しく過ごすための現代人の知恵さ」
望「絶対騙しにかかってるぅ~…」
蒼「よし、一番ソフトな奴に入ろう」
望「ほんとにいくの~?」
蒼「大丈夫だ。一番怖さの軽いやつを選ぶから」
望「怖さの強弱がわかるの?」
蒼「わからん」
望「あ・お・と・くーん?」
蒼「物は試しだ、ほらチケットとるぞ」
望「うぅ………」
………
蒼「はぁー………」
望「あれ、蒼人くんどうしたの?がっかりしてるけど?」
蒼「いやぁ"
望「面白かったね!初めての映画!」
蒼「………まぁ、楽しんでもらえたなら何より…なんだろうな」
望「んー?なんか蒼人くん残念そう」
蒼「残念じゃないさ。お前を騙して最高に怖い奴に引き込んで反応を見たかったがそんな映画じゃなかったから残念だなんて、そんな…」
望「全部だだ漏れだよ」
蒼「さて、そんなこんなでもう六時だ」
望「もう帰る?」
蒼「いや、少し早いがモールのレストランで夕飯にしよう。腹が減ってればだが?」
望「少し空いてるかな」
蒼「なら軽い夕飯だな。歩き疲れたりしてないか?」
望「大丈夫だよ。歩くのは慣れてるから」
蒼「じゃあ、ほら、手」
望「ありがとう。やっぱり優しいね」
蒼「今日に限ってはお前から所望してきたからな」
望「そうだったね、ふふっ」
蒼「…望」
望「なに?」
蒼「…お前は」
望「?」
蒼「…いや、何でもない。行くぞ」
望「あ、うん」
………
蒼「何だかんだでもう十時か」
望「やっと私たちの街までやって来たね」
蒼「長いお出掛けだ」
望「でも、新しいこといっぱいで楽しかったよ」
蒼「そいつは何よりだ」
望「…」
蒼「どうした、じっと見て」
望「…やっぱりデートって、言ってくれないんだね」
蒼「なんだ、気にしてるのか?明乃と話してたときは真っ向から否定してたのに」
望「それは………そう、だけど…」
蒼「………いずれ」
望「えっ」
蒼「いつかは知らんが、お前が遠慮したり気兼ねせずに、堂々と俺の横を歩くようになったら、その時は文句なくデートって言ってやるよ」
望「!」
蒼「お前、まだ自信がないんだろ。自分がここに居ていいのかとか、そんな心配ばかりが頭の中を巡ってるんじゃないか?それで俺と歩くとき、並んで歩けない癖がついてるだろ?」
望「ぁぅ」
蒼「だからな、その意識が完全に溶けてなくなって、気兼ねなく横を歩けるようになったなら、その時はデートに行ってやるよ」
望「………うん」
望「…うん」
蒼「さて、明日はまた仕事だ」
望「っ、頑張って、蒼人くん!」
蒼「へいへい」
望「今度のお休みはいつ?」
蒼「順当に行けば四日後だったかな」
望「今度はお出掛けできる?」
蒼「ご所望なら行こうじゃないか」
望「もちろん!」
Date-07/19
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