第14話 あくまで幼女じゃなくて男の筈なんですよ

 門を出るとレンガに囲まれた倉庫のような建物があった。10メートルぐらいの高さに中世レベルの文化圏なのでシャッターのようなものはなく、内部が丸見えで干し草が詰まれた馬小屋らしき内装。

 繋がれている馬がいるはずだが、大きさが馬を一のみできそうな大きさの灰色の鱗に覆われたトカゲを思わせるフォルム。背中には大きな1対の翼に鉤爪の雄々しき姿。

 二体いて、ぎょろっとした三白眼が威圧的だが、見方によってはかわいくも思えてしまうのが不思議だ。

「ワイバーン。これが私達の足。どうよ」

「すごいです!」

 リゼットは素直にその言葉を言って、ワイバーンの周りをふわふわと回る。子供のようにキラキラを目を輝かせ、2体の竜の雄姿を旋回しながら観察する。

「はしゃぐな。幽霊メイド、お前が見えないからいいが、その姿は子供っぽくて主の俺としては恥ずかしい」

「でも、ワイバーンですよ! かっこいいですよ!」

「純粋だねえ。私にもそういう時期がありました。じいさんや」

「誰のことを言っているんだ」

「のりが悪いなあ。昔なら、私は不老不死だからじいさんなわけが」

「やめてください。喋ったらコロス」

「おお、こわいこわい。で、フェリシー、そろそろ、落ち着いたかな」


「ボクは男だ。だから、許して。ボクはボクはボクハおん、違う。ボクは男なんだ。だから、やめろ。ああ、ボクはボクボク・・・・・・ワタシ?」


 目を虚ろにした幼女メイドが真っ白になりそうになりながら、へたりこんでいた。

 もう少ししたら、あしたの●ョーのようになってしまいそうなくらいに。


「つやつやになりました」


 もう一人はすでにほぼイキかけましたと言いそうな顔をして、大変満足そうだった。

「フェリシー、満足?」

「ええ、夢の生活ってこういうことって思うくらいに。かわいい生物を抱き上げて、いろんなところを触らせていただきました」

「じゃあ、早く。今までとろけていて、あなたの株はだだ下がりよ」

「まだ、私は夢を見たい。はあ、満足です」

「おーい。帰ってこないと幼女が逃げちゃうよ」

「なぬっ、それはいけません。世界は幼女の為にあるのです。幼女は守らなくてはいけないのです。幼女逃げる、ダメ、絶対」

「どうでもいいから、早くワイバーンに乗せろ。でないと間に合わない。幼女はそいつにやるから」

「やめろ。ボクはこんな奴、ハッ」

 フェリシーの手が質量のある残像のように揺らめき、触手のような印象がするのはリゼットの気のせいだろうか。

「多分違うはず」

 無理矢理結論付ける。

「違うと思うな」

「違うな」

「私の思考に入らないでください! というか、ワイバーン乗りたいです」

「お前、幽霊だし」

「あっ・・・・・・」

 悲しい現実が待っていた。

 幽霊は乗ることが出来ない。空を飛ぶことが出来るが、物理で触れることは出来ない。

 ということは。

「触ることが出来ない。ということだ」

「言わなくてもわかります~」

 頑張って、物理的に触る能力をもっと上げようとリゼットが思ったときだった。


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