第12話 腐れ縁の金髪少女はちょっと困る
「コイツが仲間なのか」
「まさか、知り合いだとは思いませんでしたが、その通りです」
「おりょりょ、修也君と知り合い? へー」
フェリシーと修也を金髪の少女を見比べ、ふっとリゼットと目があった。
目を細め、じーっと見つめている。
もしかして、自分が見えているのだろうかとリゼットは声をかけようとするが、目をそらして最後にカロリナへと視線を向ける。
「なにやだこれ、かわいい」
「やめろ! ボクをのおおおっ」
金髪の少女にもみくちゃにされ、カロリナは悲鳴を上げる。
「まあ、こんなものか」
修也はカロリナの服の襟を摘み上げ、抱かれて締め付けられて顔を土気層になっている幼女を助ける。
「何をするんだよ。修也」
「幼女が死にそうなのでな。俺もさすがに不憫かと思って。悠美、君はいつも力いっぱいにしすぎるんだ。おかげで近所の野良猫が寄ってこないし、犬はキャンキャン吠えて逃げ腰だ」
「かわいいは正義。それを収集するのはラブリー専門家の私としては本能だよ!」
「そんな真面目な顔で言われてもな」
「何? 私に死ねと?」
目をくわっと見開いた悠美に修也が少々引き気味に後ろに下がる。
「あんたにはかわいいメイドが二人もいるんだから、一人ぐらいいいじゃない」
「私が見えるんですか?」
「まあね。ふよふよ浮いているし、幽霊とか、そういう類なんだけど、ねえ」
悠美の視線がフェリシーの顔に一瞬だけ向く。
彼女には見えていないらしい。それはリゼットへの目線が向かっていないことでわかる。
「何かいるですか?」
「いんやー、別に」
悠美はリゼットにウィンクをして、修也の悔しそうな顔を見て口を猫口にしている。
「はあ、どっちも俺のものだ。お前にはやらん」
「ハイハイ。では、メイドちゃんに紹介してよ。修也」
「大野木・M・悠美。俺の腐れ縁」
「またまたぁ、友達少ない修也君の数少ない女友達。高校も同じだし、恋人関係に」
「なるわけがない」
「あっそ。そういうイベントとか憧れているんじゃないのかな」
「顔を近づけるな」
「なら、正直に告白を」
「やめい」
顔を真っ赤にさせる修也。
「まあまあ、痴話喧嘩はあとで」
「フェリシー。俺を怒らせたいのか」
「いえいえいえ。私は気を使ってですね」
真面目な顔をしているが、目が笑っている。
修也の顔がみるみるうちに赤くなり、苦虫をつぶしたような表情へと変化していく。
これはへそを曲げてしまうだろうとリゼットは思った。
傍らで見ているととてもハラハラするが、自分は見えない存在でここで何かをしても反応してもらえない人間が大半なわけで、もどかしい。
「ま、とりあえず……冗談はこの辺で置いといて。私たちも時間がないわけで。何? この中2病も連れて魔族領にいきたいの?」
「色々と問い詰めたいこともあるが、悠美の言っていることで間違いはない。魔族領に3日、いや、2日で行きたい」
「なるほど。春休みももう終わっちゃうからね。それまでに目的を終えて帰りたいって事だね」
「そういうことになるか」
「ふうむ。交換条件として、修也から出せるのはお金? それ以外?」
「護衛だ」
「ま、着地地点としては普通かな。私も修也が普通の中2病ではないことは重々承知している」
「だからこそ、私がここに連れてきたわけ」
「ない胸そらして、さびしくない?」
「んだぁごるぁ!」
フェリシーは女性としては失格のような声を上げる。
すぐに気づいて、オホホホとごまかし笑いを浮かべるものの、酒場の雰囲気はお通夜のような雰囲気に様変わりしていた。
「うっ、どうせ私は胸がないから」
「へーへ。私は胸があるから平気」
「わけのわからんことを言うな」
軽くこぶしで小突かれ、悠美は苦笑いを浮かべる。
「反省します」
その声音は軽く、反省しているようには思えないが。
「とにかく、私たちには早馬より早い移動手段があります。ただ、強行軍になる上に護衛が必要です。悠美もちょっとした手練れですが、念には念を入れて、というところでしてね」
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