第9話 商売人の女性とメイドさんと

「ありがとうございます! これこそ、グラン・エノン様のお導きですわ!」

「まあ、成り行きなんだが」

「いいえ、これこそ幸運です」

 面倒なことになった、と修也は心の中で毒づいた。

 助けた馬車の中にいたのは商人の集団だったが、一人だけ妙に絡んでくる女性の商人がいた。

 髪が茶色で後ろを纏めた眼鏡の女性――というか、若い少女とは少し言いづらいが女性とも言いづらい、18歳くらいの女性。

 商会で丁稚奉公をして、やっと独り立ちをして一人でルートを確立しようとしているらしい。

「フェリシー=ミシュレと申します。すごいですね。あれだけの盗賊を一人で退けるなんて」

「ええまあ、そうですね」

「バットという武器ですか。私のところでおろすことが出来れば利益を上げさせますよ」

 が、正直な話、急いでいるので利益がなく、適当に流したいというのが修也の本音だった。

 現在も助けたおかげで馬車でブノアに送ってもらってはいるものの、歩いたほうがましで穴以下と思うくらい。

「どうしたもんだか」

「まあ、それはそれとして、本当に強いです」

 尊敬の目というのは悪くは無いのだが、オーバーにやられるとうざい、と思ってしまう。

「だからこそ、友達が少ないといわれると思うぞ」

「心の中を読むな、幼女メイド」

「顔に出とるわ。わかり安すぎてため息が出そうになる」

 正直しんどい。早く町につかないだろうか。

 そこで魔族の国までの足を手に入れないといけない。

 この馬車はブノアからガルディアン王都のガルディオスにまでしか行かないらしく、さらに北の地にいくというと自分で足を準備しないといけないらしい。

「私が何とかしましょうか?」

「そんなことが出来るのか。フェリシー」

「魔族との取引はこれから、大切になりますからね。それとバットも取引させてもらえれば」

「で、俺に護衛でもしろと?」

「バットの話はスルーですか」

「ああ?」

 目力をこめて顔をゆがませ、不機嫌マックスをあらわにする。

 これ以上ふざけられるとまずはバッドで殴って。

「ええい、話が進まん! フェリシーさん、この暴力男は無視してボクと話を」

「いや、幼女メイドのご主人様は俺だ」

 二人の間に火花が散る。

「・・・・・・ええっと、もちろん、そのための報酬も用意しています」

 呆れられてしまったらしい。

「なるほど、いい足を持っているのか」

「正確には翼でしょうか」

 興味の惹かれる話だった。空路、魅力的な話だ。

 だが、いい話の裏には絶対に相当危険なリスクが存在する。

 そこを嗅ぎ取って、と行きたいところだが。

「1週間でいけるのか」

「ええ、2日で行くことができますよ」

 魅力的な話だった。

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