第8話 ファンタジー世界で金属バット

 考えるべきは足ということだということが修也一行の考える事だった。

 幸運なことに近くにブノアという町があり、空から見た限り歩いて1時間ほどでつくことになりそうだ。

 草原ということで道も悪くなく、街道もすぐに見つかった。

「キャアアッ!」

 ということだが、魔族がいる、ということでなんとなく察しはついていたのだが、治安はそんなによくないらしい。

 女性の悲鳴が聞えた。

 よし、無視しよう。

「何で何もしないんですか!」

 メイド1(幽霊)が騒いでいる。

 理由、面倒。以上。

「お前、ボクより外道だな」

「時間の無駄だし、面倒な事になりそうなのでかかわりにならないほうがいい」

「まあ、待て。落ち着けば次へのプラスになるのでは? こんな所で襲われるのだから、この世界の住人。ということは足を持っているかもしれないし、ツテが手に入る。もし、すべてが無くとも何らかの情報は持っている筈」

「町でごろつきをつついて、そこの親分に合わせてもらったほうが、まだいい情報が手に入る」

「ああ、言えばこう言う」

「どうして、みんなその言葉を俺に言うんだ」

「自分の胸に聞くか、人生を省みるんだな」

「はあ・・・・・・って、オイ! そこの幽霊メイド! 助けに行こうとするな!」

「だって、困っている人を助けるのは人として普通じゃないですか!」

「お前、幽霊だろ!」

「はっ、そうでした!」

「そうですかじゃない!」

 どこからか取り出したハリセンでリゼットを殴る。

「痛い・・・・・・って、幽霊殴れるハリセンでなんですか!」

「そんなの根性で何とかなる! それか、プラッシーボ効果だ。どうだ」

「単語の意味はわかりませんが、色々と間違っているような気がします! とりあえず、しまって下さい! あとは助けに行かないと!」

「人の話を聞いていたのか!」

「聞いていましたが、無視です。ナッシングです!」

 幽霊メイドはふらふらとしながらも意外と早く飛んでいく。

「くそっ、何でこんな目に!」

 修也は毒づきながらもリゼットを追いかけ、街道のど真ん中で男5人と白い豚獣人――オークらしき魔物を10匹従えた集団に囲まれた2頭立ての馬車を見つけた。

 厄介事に首を突っ込んでいかれては見捨てようかと思っていたが、良心はあったらしい。

 頭を抱えたい気分になりながら、集団の前に修也は立った。

「私、幽霊だから誰からも相手にされない」

 どっと疲れが出るようなリゼットの言葉に修也のやる気メーターはマイナスに達しそうだ。

「なんだあ、お前」

 雑魚らしき色あせた皮鎧を着たおっさんが一人前に出てきて、ショートソードを見せて威嚇してきた。

 テンプレのセリフにだみ声。不快だ。

 こういうゴミは早く片付けないと疲れるだけだ。とはいえ、

「この世界での俺のデビューはこんなしみったれたオッサンで始まっては困るんだが」

 修也はポケットに入っているスマホを取り出すように得物取り出して、自然な動作で目の前のオッサンの背後を取った。

「はあ、何言って・・・・・・ぐえっ」

 頭に直撃した何かに後頭部を殴られ、オッサンが悲鳴を上げ、倒れる。

「って、金属バットですか?」

 修也の得物は黄金に輝く金属のバット。

「何か悪いことでも? 俺の国では銃刀法と言うものがあって、刃物を持つには規制がある」

「いやいやいやいやいや、ここは異世界であって」

「俺は異世界に転生したとかそんなわけではなく、ただの春休みを異世界ですごす高校1年だ」

「何か違う! 色々と違う!」

「知らん。この世界の法律とやらは知らんので俺の世界の法律でやらせてもらっているだけだ。理解できるか。メイド」

「ナンカ、モウイイデス」

 納得してくれたようだ。棒読みなのが少々気にはなるが、今は気にしない。

 あとでご奉仕してもらう予定だが。

「何だお前、誰もいないところで話して・・・・・・・きめえ」

 茶色いローブを着た魔術師らしきひげもじゃのオッサンがどんびきしている。

「お前がリーダーか。あと、オークを操っている奴もお前だな」

「へっ、誰がそんなことを言うかよって、ンゴ」

 なら勝手にやらせてもらうわけでさっきのオッサンと同じようにバットで後頭部を殴り、白目をむかせる。

 オークがハッとして、クモの子を散らすように逃げていく。

 残っていた三下らしき男たちも思わぬ闖入者に驚き、体を一瞬硬直させたかと思うと逃げていく。

「ま、こんなもんだ。いい子でちゅねー黄金バッ」

「ええっと、馬車の人を助けましょう」

「いいところだったのに」

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