第7話 外道はここにいる
一寸先は闇。
という言葉をリゼットは何故か思い出した。
それ以上は思い出すことを頭が拒否している。
自分は幽霊なのに思い出すことが出来ないがだが幽霊の癖に掃除をさせられた。いや、思い出すことを拒否しなくては、あ。
頭痛がする。
今の暗闇の前、ふと修也ご主人様の凶悪な笑み。あれは獲物を嬲る外道の姿だ。
世界を飛ぶという風呂敷――ではなく、マントのの中に放り込んだときの笑みは死神を
考えるのはよそう。多分踏み入れてはいけない過去なのだ。自分は未来に生きるべきなのだ。幽霊だけど。
「ボクはご主人様にオツカエシマス。オツカエシマス。コンジョウデオツカエシマス」
同じようにメイド服を着せられたカロリナの抑揚の無い人形のような、平坦な声がリゼットの心を揺さぶるが触れてはいけない。
ごうごうと荒れ狂う風のような音が聞える。外は決して除いてはいけない。世界を飛ぶというのは恐ろしく危険なものだ。
それをご主人様は簡単に行うことが出来たらしい。今も横で寝息を立てながら、眠っている。
天才だというのはよくわかる。まあ、何とかと紙一重だが。
ふと、空気が変わった様な気がした。
先ほどまでは無かった頭がくらくらするような浮遊感がして、何故か落下しているような。
「って! 何か落ちてません?」
風呂敷がとかれて、眼下に広がるのは箱庭に小さく見える草原。多分、落ちたらミンチだろう。
「心配するな。こんなことがあろうかと、パラシュート(一人用)を用意していたのだ」
「私は無事じゃなーい!」
「お前は幽霊だ。飛べるだろう」
「ボ、ボクは飛べませーん! おい、助けろ!」
「自分で何とかするんだな」
「鬼! お前、人間の皮をかぶったクズだ!」
「知るか! って、幼女、俺につかまるな! いてっ、やめいっ」
後ろで醜い争いが繰り広げられる中、リゼットは壁に囲まれ、多くの尖塔が立っている町の姿を見つけた。
「あれ、町です!」
「まずはあそこにいって、情報とここがどこだかをああもう! 幼女メイド、そこをつかむな・・・・・・ああんっ」
男の気持ち悪いあえぎ声に寒気が走る。
「死なない。ボクはこんなところで死なない!」
セリフはかっこいいのだが、顔は鼻水まみれで修也に引っ付いているので決まらない。
ふわりと広がった修也のパラシュート(重量オーバー)はよろめきながら、重力に押されながら地上に軟着陸する。
「ふう、慰謝料増やすからな」
「ボクが死んだらせしめることも出来ないんだが」
「そんなこと、倍返しという意味でお前の家に行って脅せばいい」
「ろくでもないこといっている自覚あるか?」
カロリナが今にも泣きそうな顔で抗議するが、修也には聞いていない。
というよりもどうでもよさそうだった。
「で、さっき見えた町に関して幼女メイド心当たりがあるか?」
「さっきの町? ああ、ブノアだろうか。ガルディアンとシャムノアの国境の町だったとは思うが」
「ほう。土地勘はあるのだな。なら、話は早い。ここから、どれくらいでつく?」
「歩いては1ヶ月はかかるな。ここはかなり南で、我らの魔族の土地は北なのでかなり遠いな。早馬で1週間か」
「まずいな。あのスライム、面倒だからってついてこない上に1週間で帰って来いだとか言ってたしな。春休みが終わるから仕方ないが、その辺は誤魔化してほしいんだが」
「いや、それは難しいかと思うのですが。それに元に戻す方法とか考えないんですか」
「なるほど! スライムから戻す方法について触れなかったからむくれているのでは・・・・・・」
「お前、親戚なのに容赦ないな・・・・・・」
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