第6話 hentaiご主人様
時間は修也とリゼットの残念の出会いの日までさかのぼる。
変質者そのものになった修也が息をハァハァさせながらリゼットへとじりじりと近づき、男の残念なところを余すところ無く体現していた。
「メイド! それは男のロマンでもあり夢! 英語で言えばドゥリイイイイイム! イケボの俺かっこいい! よし、これでメイドの旦那様として従える風格ある。うむ、では俺のアイテム、ミニスカメイドフリル付きを」
「私、幽霊! そんなの着れません・・・・・・というか、私同意なんか」
「知るかあああああ! あと、根性で着せることできるさあああ!」
「ちょっ、女の子を脱がすとか、ええっ!」
修也はリゼットの白いドレスのスカートの裾を引っ張り、変質者の姿を余すことなく体現する。
「フフフフフフ。俺をなめるな。非常識を身にまとう男、または不可能を可能にする男こと佐野修也だ。幽霊に服を着せるなど、朝飯前だ。さあ、このメイド服に着替えろ。そこの幼女、お前も手伝え」
「ボクは偉大なる魔貴族 カロリナ。高貴なる72族の一つだ。そんな魔族の貴族が女の着替えなど」
「お菓子あげるから、手伝うんだ」
リゼットが食べていたスポキーの箱を掲げ、修也は
「手伝うーはっ!」
修也は口をゆがめ、満足げな笑みを浮かべる。狡猾な狐が獲物を見つけたときのように。
効果は抜群のようだ、と勝利の確信を修也は得たと心の中でつぶやく。
「決まったな。これで終わりだな」
「ハッ! ボクはお菓子なんてものは必要ない筈なのに」
「といいながら、スポキーに手を掛けているのは無様だな・・・・・・」
「体だけではなく、まさか」
「確か作者は魔力の光を反射して、幼女にするとか何とかしか言ってなかったけど、変態だしなあ。ありえるかもしれんが。ちなみに5年くらいは元に戻せない」
カロリナの顔が青くなり、気づけば真っ白になってよろけてたたみにへたり込む。
「こんな筈では・・・・・・魔王様、ボクは使命も果たせず、ただ辺境の世界で無様な姿をさらすなんて」
「魔王ねえ。最近のはやりか・・・・・・。ちなみに金持ってる?」
「何をわけのわからない事を」
「お前から慰謝料をもらわないと。そこのスライム美女への」
後ろの賢叔父(美女)がぶんぶんと腕を振り回している。
準備が出来ている。何かは不明だが、ろくでもないことだとは予想が出来そうなサインだとは思われる。
今、カロリナの中にはドナドナが流れているのではなかろうか。
自業自得なのでどうでも良さそうなのだが。
「そこのリゼット姫が体で支払うのでは」
「それはメイドの分だけ。それとも幼女のまま一生を過ごすか?」
「とりあえず、ボクの家に帰れば少しは」
カロリナは魔貴族ということで金はありそうだ。
どれくらいふんだくろうかと修也の頭の電卓がトレーニングを始めている。
「というか、この体を元に戻せ。これでは編集に電話も出来ん」
「その辺はスライムだから、根性で出せば、常識を変えられる」
「修也、わけのわからん事をいうな・・・・・・あーあーあー」
賢叔父の声が少しエロボイスな美女から、野●ひ●しっぽい声へと変貌する。
どうやらスライム的な根性は常識を超えたらしい。
「汚い声だから、やめてくれ。顔に合わない」
「へーへ。あと、編集との直接のやり取りができんし。つーか、こんなんではこ近所さんにも不振がられる。元に戻せ」
この方が修也としてはいいのだが、うまくはいかないらしい。
メイドも手に入れたのはいいとしてもあとの整理はうまくいかないらしい。
引越しの整理も出来ていないせいだろうか。
「何か変なこと考えていませんか」
「メイド、お前エスパーか?」
「言っている意味はわかりませんが・・・・・・私はメイドではなく、リゼット・・・・・・って、服がメイドに」
「うむ。このメイド服は俺のコレクションの自慢の一品で所有者の俺がメイドと思ったものに自動的に装着させるという高性能な服だ」
「何というはた迷惑な」
便利なものだと、と常々修也は思っているが理解されないらしい。
「ま、メイドは決定事項だ。少しずつ幽霊としての家賃を体で払え」
とりあえず、一つずつ整理をしていったほうが良さそうだった。
「さし当たっては引越しの整理をメイドにさせて、次はカロリナの家に行って、慰謝料をもらうだな」
「そんなことできるわけが」
「できるさ。なんたって、俺は佐野修也だからだ」
歯を出して、俺のにかっと冴えない平凡な少年が笑みを浮かべる。
期待できなさそうな感じだが。
とばかりの全員の空気を修也は嗅ぎ取ったが、どうでもいい。
「フッ、俺は世界も超えられる力を持っている。さあ、メイドよ掃除が終わったら行くぞ」
「ええっ! そんな気軽に」
「時間は待たない。このマント」
修也が偉そうに出したマントだが、ものすごい胡散臭い代物にしか見えなかった。 どちらかという大量生産された、
「唐草模様の風呂敷・・・・・・」
「おい、売れない作家・・・・・・何か言ったか」
「もうどうでもいいわ。俺は仕事がある。次の作品を出さないと」
「母さんから聞いたが、半年くらい編集から没をもらって」
「黙れ」
「あっ、ハイ――ではなく」
コホンと一呼吸おいて、修也は。
「メイドが掃除をしてから慰謝料せしめに異世界に行くぞ」
高らかに宣言した。
「あ、そういえば、カロリナって名前だが女の子みたいな名前ですね」
「ううっ、それ気にしているのに」
「おい、お前ら何俺を無視している。カロリナ幼女」
「幼女いうなー!」
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