第3話 幽霊少女は空気が読めない

「あの無精ヒゲめ、耳元で怒鳴るからまだ耳鳴りがする」

 しかも頭痛もして、後まで続きそうだった。

 まあ、そんなことは修也に取って瑣末な事だ。

「自業自得のような気がするんですけど」

「黙れ。俺のロマンを奪い取った残念な幽霊め」

「ど、どういうことですか・・・・・・?」

 幽霊少女がオロオロとしている。

「わからんのか。理解力がないな。どれだけ察しの悪い幽霊なんだ。いらいらするな」

「わからないのが普通のような気がします」

「生意気な自縛霊だな。とりあえず、にんにくぶつけんぞ」

 どこからともなく、修也の手には繋がったにんにくのブレスレットとともに出てきた。

 ちなみに吸血鬼対策用だが、幽霊にも効きそうなのでぶつけたくなったのが真実。

「どこから出したんですか」

「そんなのどうでもいいだろ」

「いやいやいやいやいや、気にしますよ!」

「細かいことをしたら、はげるぞ」

「はげません! 女の子に失礼じゃないですか」

「あーはいはい。どうでもいいですよ。さて、掃除しよう。お前もポルターガイストとか使えるだろ。掃除手伝え。オプション幽霊」

「意味がわからないです。私にはリゼットって、名前があるんです」

「で、オプション幽霊」

「人の話を聞かない人ですね? お母さんから人の話を利きなさいとか言われませんでしたか?」

「えーそんなこというのー。どうでもいい。どうせこのパターンだとお前の記憶が無くて、ここにいつのまにかいたとかそんな話だろ」

「そんなわけないです。私はここにいる前はあれ?」

 修也はオプション幽霊(リゼット)の残念っぷりに鼻で笑う。

「で、ポルターガイストで部屋のほこりを取ってくれよ。あ、何も出来ないのかな?」

「んー私の力はあります。そう、魔法です!」

 リゼットは右手を突き出す。そこに力があるという気配がした。

「光よ」

 その力のある短いスペルワードとともに一つの白い光を放つ玉が一つ。

「で、この魔法の効果は」

「これだけです」

「ん?」

「だから、この光の玉を出すだけの力です。それでもすごいんじゃないですか」

「しょぼっ。ちいさっ。残念すぎる」

「エエエエ。驚かないんですか!」

「俺はポルターガイストみたいに暴れる力とかそんなのが見たかったんだ。それか、この部屋のほこりを掃除してくれるような力とか。便利なのだったら驚く」

「そんなの使えませんよ」

「えー。使えねえなあ」

「わけがわかりませんよ!」

「俺のほうがわけがわからない。この残念オプション幽霊。やっぱ、ニンニクで除霊を!」

「そんなの怖くないです。あ、でもくさいっ」

「くらえーニンニク攻撃!」

「私にニンニク投げないでえっ」

 ふわりとリゼットは幽霊のごとく(?)浮かび上がり、にんにくをさける。

「むっ、やはり幽霊というのは伊達ではないようだ。重力に逆らって浮かぶとか」

「あああっ、前の人はすぐに私の姿を偶然見たら逃げたわけなのに。この人はこんなに無茶苦茶なんですか!」

「ええいっ、オプション幽霊! 降りて来い」

「やです!」

「さすれば、今度は箒ではたいて」

「だから、どこから出して」

 修也はハエを追い払うように1メートルはある箒を振り回す。

「うらっうらららっ」

「危ないです。やめてください」

「なら、この部屋の掃除をしろ!」

「何で私が!」

 普通なら幽霊が住人に迷惑を掛けるはずの姿が逆転し、わがままを言う住人と常識的な幽霊が逃げ回る。

 何かがおかしかった。


「リゼット王女はどこですか!」

 そんなところに芝居がかった男の声がした。

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