第2話 やり直しはありません
まだ、ブログストック分です。
************************************
「台無しだ。やり直しを要求する!」
修也は机があれば、叩き割りそうなほどに右手の握り拳を振り下げて怒鳴った。
「ええっ、あのっ、そのっ・・・・・・私のせい?」
赤髪の少女はオドオドしながら、不安げに消え入りそうな声で返した。
「そうだ。俺が思っていた幽霊との出会い。この何にも無い六畳間の部屋でせんべえ布団を引いて、ふっと起きると女がうらめ~し」
「よくわかりませんけど、ものすごく馬鹿にされているような気がするんですが。それもものすごく」
「ん? 俺は真面目に言っているんだぞ。この瞳に偽りは無いんだが、どうだ。この曇りなき眼。ちなみに俺イケメン」
「何の特徴も無い、平凡な黒瞳、黒髪。あとは」
少女ははっとして、口をつぐむ。
「何を言おうとした。答えろ」
「それはお前のほうだ。この近所迷惑!」
「はあっ、汚いひげ面を見せないでくれよ。叔父さん。折角、幽霊について突っ込みを入れているというのに」
「わけのわからん事を言うな。お前、頭大丈夫か?」
「大丈夫だ。俺は普通だ。いや、天才だな」
「麗香姉さん、このクソガキを引き取ってくれ。俺には中2病をこじらせたガキなんて面倒見れない」
「ふっ、俺の天才性をわからないだ何て、叔父さんはわかってないな。母さんは――世界で一人の個性を持つ何とか。扱いにくいけど、扱えたらまあいいんじゃない、とか」
「それ、遠まわしに馬鹿って言ってんだよ!」
修也には理解が出来ない。母さんはそう言って個性を伸ばせばいいといってくれた。ただ、それを隠す必要はあると言ってはいたけれども。
孤高の天才と自分は思って、真直ぐこの個性の王道を貫こうと。
「お前、中学で友達いたか?」
「あの・・・・・・」
「悠美と相馬とか」
二人の仲間がいる。それだけで十分だ。
「どうせ、お前のことだから、キミみたいな子と腐れ縁になるのはホント辛いとか言われてないか」
そんなことは言われていない。
影で二人は修也係とか言われていることは聞いたことがあるが。
本人たちに聞いたら、目を逸らされたことについては忘れない出来事だったというのは内緒だ。
「というか、それはどうでもいい。この物件についてだが、ロマンが無さ過ぎる。幽霊とか言いながらそこにいるではないか。赤い髪の女の子が」
「ああ? スポッキーが落ちているがそれ以外は何も無い六畳間だが」
「その・・・・・・」
昭和臭のするレトロな畳に昨日運び込まれたせんべえ布団。
あとはそこに不似合いな淡い赤い髪の人形のような少女が白いレースのついたドレスをきて、座っているではないかと修也は付け加えようとしたが、
賢叔父の顔は本当に状況が飲み込めないとばかりに眉間にしわを寄せていた。
どうやら、本当に見えないらしい。
「本当にいわくつきの物件らしいな」
「というか、私が見えるんですか?」
修也は正直驚いたとばかりに淡い赤い髪の少女、もとい、幽霊少女が話しかけていることに気づく。
しかし、シッシッと手で追い払うような仕草をする。
幽霊少女は酷いと言いたげにサファイアのような青い瞳に涙を浮かべながら、部屋の奥へ下がった。
「悪かった。賢叔父さん。近所迷惑なのはわかったから管理人室へ帰ってくれ」
「お、素直なのはいい事だ。叔父さん、素直なのはいいぞ」
「早く帰れ。むさくるしい40歳のおっさんの顔はいいものじゃない」
「それが本音か・・・・・・ちなみに35だからな」
「40でも35でも変わらない」
「ちげーよ! 5歳もちげーよ!」
「はあ、疲れる。本当に疲労感が」
「俺のほうが疲れるわ! クソガキ!」
「あー言えばこう言う」
「それは俺のセリフ! あと、俺のネタとるな!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます