第2話襲撃
「誰なんだよ……」
ミイラの風格をした女が学習机の椅子に堂々と座っている。異様な雰囲気がする。怖い。わけがわからない。
全てを忘れて家を飛び出した。逃げ出した。精も根も尽き果てるまで走り続けた。もう立つことさえままならない。その場に倒れ込む。
「お前か、やっと見つけたぞ。」
さっきとは違う知らない男の声がした。その姿は、中折帽子にサングラス、そして、季節外れの口元を隠すマフラー。さらに、スーツ姿ということでどっかのエージェントみたいだがどう見ても不審者だ。
「石を渡して貰おうか。それさえすれば危害を加えるつもりは無い。」
一切、声のトーンをロボットのように変えずに言葉続けるから不気味な感じがする。ただの不審者ではないようだ。
「さぁ、石を出せ。」
「石?体の中にあるやつのことか?そんなこと言ったって出し方が分からない。石をとってくれるなら喜んで渡すよ。」
「とぼけるな。出す気がないなら力尽くで取るのみ。」
口調は粗いがその声は相変わらず冷たい。それが彼の冷徹さを表していた。膝が震えて立って逃げることすらできない。もう誰でもいい………誰か助けて…………。
「仕方なし。」
その一言とともに彼の右腕が爪のような剣に変わる。間髪入れずに俺の腹元へ男は飛び込んで来る。避けられない…………。
「しゃーないスっねえ。」
知っている声がした、ついさっき自室で聞いた声だ。瞬間、剣をつかみ柔道の一本背負いのように男を地面に叩きつけた。
「まさか。ここは退くべきか……。」
そして男は霧のように消えてしまった。
「そんなへっぴり腰じゃこの未来は変えられないッスよ。」
どうやら彼女は敵ではないようだ。
「待って、一回待って。どういうことか待ったわからない説明してくれ。」
「説明って何も、ユーがあたしを起こしたんじゃないスッか?」
「さっぱりわからない。気付いたら石が体の中に入っていったんだけど。」
「どうやら、巻き込まれちゃったみたいスッね。詳しい話は追追するとしてとりあえず我が家に帰るスッ。」
いつから俺ん家は彼女の我が家になったんだ。
目覚めのミライ 柳うい郎 @aladdin
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