第3話
日付が変わって9月17日。午前1時前に佐田は宇都宮に到着した。その間にも、東京では巨大ロボットと小型ロボット群との戦闘が続いていた。巨大ロボットによる攻撃のみならず、小型ロボット群による射撃の流れ弾もまた東京を破壊していった。巨大ロボットは目から光線を出す、腕を飛ばすといった攻撃方法を持っているようだが、そういった方法は小型ロボットに対して一切使うことは無く、一体一体殴る、掴む、投げるといった原始的な方法でのみ攻撃していた。一方小型ロボットの放つ射撃は、奇妙なことに弾丸のみが爆発するのではなく、着弾点の周辺にある物体をも爆発させていた。呼びかけてきた宇宙船らしき飛翔体には今のところ攻撃を仕掛ける様子はなかった。
「あなたが佐田勇一だな」
駐屯地にて、佐田は飛翔体に乗っていた人物たちと対面した。その容姿は肌の色が青いということを除いては地球の人間と違いはないように見えた。
「ええ。私が日本の内閣総理大臣、佐田勇一です。あなたたちには聞きたいことが山ほどあります」
「よろしく。翻訳機がまだ万全ではないが許してくれ」
「まず、あなたたちは何者なのでしょうか?そして、一体何をしにこの地に来たのでしょうか?」
「我々はこの星の人間ではない。この星から遠く離れたタヤンという文明圏から来た。この星にはあの破壊兵器を止めるために来たのだ」
「あの兵器とあなた方とはどういった関係なのですか?」
「我々の文明圏では、かつてイェズとダクスという二つの陣営に分かれて戦争をしていた。その戦争はいくつもの惑星を巻き込んだ大規模な戦争だった。戦争は長引き、百年以上も続いてしまった。そんな中、イェズ陣営が作り出したのがあの破壊兵器なのだ。」
「では、あなた方はダクス側の人間ということですかな?」
「いや、話はまだ途中だ。あの破壊兵器は実戦投入前に暴走したのだ。破壊兵器は陣営に関係無く攻撃を始めた。そして、あの兵器はあまりにも強すぎた。あらゆる攻撃を凌ぎ、あらゆる要塞を破壊し、数で押しても全て破壊されてしまった。ここに至って、両陣営は休戦し共に破壊兵器を止めることになった。分かるか?百年以上続いた戦争が、たったひとつの兵器のために終結してしまったということだ。そしてそれから20年間、我々はあの破壊兵器を止めることができなかった。それどころか、あの兵器が何から何まで破壊していったせいで我々の文明は衰退しつつある。タヤン文明人たちの母星である惑星イェズは跡形も無く破壊されてしまった。イェズでしか作れなかった物品、イェズにしかなかった技術、情報はそのほとんどが失われた。今では奴に対抗するための新兵器を開発するどころか、過去に存在した兵器の復元すら困難だ」
荒唐無稽とさえ思えるほどに、あまりにも壮大な話であった。自分たちの常識とは遥かにかけ離れた世界の実話を目の当たりにして、佐田は言葉を詰まらせるしかなかった。
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