⑨巫女めがねっ娘に引き出された本音

「見られて、しまったのぉ。われの怖い目を……」


 『怖い目』。


 それは、事実だ。

 確かに、自意識過剰な連中には所謂『メンチを切られた』と思わせる眼光である。


 だけど、それは『目力がある』とも言えるのだ。

 たすくは、最初からそう捉えていた。


 だから。


「綺麗な瞳だよ、倉主くらぬしさん」

「え?」


 翼の言葉に、顔を真っ赤にする真萌まほ


「俺は、この瞳が怖いなんて思わない。力強くて、凛として、巫女としての威厳を感じさせる、素敵な瞳だと思うだけだ」


 真っ直ぐその裸の瞳へと、自分の銀縁眼鏡越しの瞳を合わせる。


「でも、だからこそ。俺は、その目力を美事に中和して絶妙のバランスを産む、眼鏡を掛けた倉主さんが、好きだ」

「あ、な、何を、言っておる……あれは、伊達なのじゃぞ?」

「そ、そうよ! 伊達眼鏡よ! 偽物よ!」


 透子とうこが、必死にアピールする。


「それなんだけどさ、別に、伊達眼鏡でもいいじゃないか。似合ってれば」


 翼はさらっと、核心を突く。

 真萌と透子が、しばし言葉もなく固まる。


「……気づかれた!」


 沈黙を破ったのは、焦ったような透子の声だった。


「もう! 折角、伊達眼鏡=偽物=偽めがねっ娘って思い込ませて眼鏡を外させようとしてたのに! それで戦意を削げると思ったのに!」

「え? 伊達眼鏡でも、よいのか?」


 透子の思惑通り半ば暗示に掛かっていたのだろう、きょとんとして真萌。

 翼はしっかりと瞳を合わせたまま、


「伊達眼鏡だろうとな、倉主さんは素敵なめがねっ娘だっ!」


 翼は、正直な気持ちを叫んだ。


「おお、そうか、そうなのか……」


 喜びを噛み締めるように、真萌。

 途端、翼は再び光に包まれる。


 次に気がついたとき。

 視界は、大事な親友と共に。


「巫女魔法少女めがねっ娘 ぐらっしぃ∞まほ! 再誕じゃ!」


 こうして、真萌は戦意を取り戻し、あっという間に形勢逆転。


「めがね・あろー!」


 やはり、最後は弓で決めることにしたのだろう。

 無数の矢を番え、三メートルの宇宙人へとこれでもか、と撃ち込みに撃ち込んだ。


「ああ! 三メートルの宇宙人さんがっ!」


 あっという間にハリネズミのようになった三メートルの宇宙人は、光の粒子となって溶けて消えてしまう。


「さて、どうするかの?」

「……降参。勝てないもん、あたしじゃ」


 眼鏡を外して本当の自分を発見した少女と、眼鏡を掛けて救われた少女の闘いは、あっけなくめがねっ娘の勝利での幕切れとなった。

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