④巫女めがねっ娘は人づき合いが苦手

 雑用が終われば、翼の行くところは一つ。


「紹介、とな?」


 今日も当然のようにやってきた嵩都たかつ神社で、たすく多菜美たなみとの一件を早速真萌まほへ話していた。


「ふむ……われが人見知りと知っての所業か、それは?」


 情けないことを妙に偉そうに言う真萌。


「勿論、それは知っての上だ。でもな、いつも一人で飯喰ってるし、親友としても委員長としても心配だったんだ。だから、いい機会と思ってな」

「われは、親友の来栖辺くるすべ君がいてくれるだけで十分なんじゃがのぉ」


 ちょっともじもじしながら、真萌。

 桜色の眼鏡フレームのように微妙に色づいた頬は、傾いた夕陽に紛れて目立たない。


「そう言って貰えるのは嬉しいけどな、やっぱり、ちょっとは女友達もいた方がいいんじゃないか?」

「はぁ。やはり来栖辺君は来栖辺君じゃのぉ……」


 溜息を吐き、真萌は仕切り直すように、言葉を続ける。


「ともあれ、そうは言われても、人づき合いは不得手なのじゃ。特に女子の間のな」


 女子の方が、男子よりもグループ意識が強く、面倒なことも色々あることは見知っている。だからこそ男子の翼と友達になることを選んだのだろうとも、翼は察していた。


 その察しが正しいかは、ともかくとして。


「そこを、何とか頼むよ」


 神社らしく、二礼二拍手で頼み込む翼。


「……わかった。そこまでされては仕方ない。他ならぬ親友の来栖辺君の頼みじゃ。一度、その真名井まない多菜美とやらに会うだけ会ってみよう」

「ありがとう」


 翼は、ホッとしながら一礼して言う。


「しかし、小さいもの同士、か……」

「何かあるのか」

「いいや、こっちの話じゃ……それより、明日の約束、忘れておらんじゃろうな?」


 勿論、翼は忘れていない。楽しみにしているぐらいだ。


「十三時、神本街駅前だな?」

「うむ、そうじゃ。特に行きたいところなどがあればと思ったのじゃが……」


 そうして、しばし翌日の相談をして時を過ごした。


「青春、してますね」


 物語の神がこっそり拝殿に現れて呟いたのだが、話に夢中で二人は気づいていなかった。

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