⑤背の高い高瀬さんは頑張ってはいる

 翌日の休み時間。


 入学式でやたら周りに声を掛けまくっていた岬なら他のクラスの人間についても何か知っているのではないかと、たすくは高瀬のことを尋ねてみた。


「一年E組の高瀬さん……ああ、あの凄い背の高い子だ!」


 やはり知っていたようだ。


「って、どうして高瀬さんのことを? もしかして、おっきな女の子が好みとか?」

「いや、そういうのじゃない」

「あはは、そうだな。翼のような見るからに堅物キャラがそれはないか」


 翼は、昨日の出来事を話し、ちょっと様子が気になったと正直に告げる。こういうとき、委員長キャラは役に立つ。


「他のクラスにまで気を回すとは、委員長の鏡だねぇ……」


 そう前置きして、岬は高瀬さんについて知っていることを語ってくれた。


 彼女のフルネームは高瀬野々花ののか。現在、その身長を活かすべくバスケ部に仮入部している。


 高さは力ということで、先輩方はかなり期待していたようだ。


 だが、いざ練習を始めてみれば基礎練習にもついてこれないレベルの運動神経ということが初日に判明。期待した反動で先輩方の風当たりは悪そう、ということだ。


 すぐに辞めるかと思われたが、やる気だけはあるようでその気配はなく、それも周囲の苛立ちを誘っている。


 おおむね、昨日目にした状況に合致するが、想像していたよりも状況は悪そうだった。


 因みに、真萌は同じ教室で話は聞こえているだろうが、特に反応はない。


 基本、朝と放課後しか話していないが、真萌は他の人がいると話したがらないので仕方ない。


 人づき合いが苦手と言っていた通り、他のクラスメートとは最低限のコミュニケーションのみ。無視されたりしたりはしていないのだが、ちょっとクラスで孤立気味ではある。それはそれで翼の気掛かりでもあった。


 一方で、もう一人、この話に耳を傾けていた人間がいた。


「あ、それならあたしも副委員長として協力するよ? 高瀬さん、同じ中学だし」


 透子は、挙手しながら翼の隣にやって来る。


「そうか、それは助かるな」


 翼も渡りに船とあっさりそれを了承するが、そこで突如ガタンと大きな音がする。


「な、なんでもないのじゃ……」


 そう言って、倒れかけた机を戻す巫女がいた。机にぶつかるかして倒しかけたらしい。


「?」


 翼にはなぜそんなことになったのか思い至らないが、今は野々花のことが先決だ。放課後、雑用が済んだら様子を見に行くことにした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る