④待たされた巫女めがねっ娘はちょっと不機嫌

 放課後。

 授業が終わってから二時間は経ち、陽もすっかり傾いた頃。


「遅かったのぉ」


 拝殿の段に腰掛けた巫女が言う。なんだか不機嫌そうだ。


「すまん。委員長の仕事があったのと、校舎を出がけにうずくまってる女子を見かけてな……」


 そうして、高瀬との一件を伝える。


「ふむ、それは気にはなるの」

「ああ、だけど、当人の問題だから、口出しするのも……」

「いや、そう言う意味ではない」


 翼が己の判断を披瀝ひれきしようとしたところで、真萌は言葉を遮る。


「タイミングが良すぎるのじゃよ。巫女魔法少女めがねっ娘の役割に絡んでおるのでは、と思っての」


 そこで、段から立ち上がって本殿へと向かう。


「さて、物語の神よ、これは主の思惑の内なのかの?」

「ええ、正解です」


 唐突に、賽銭箱の前に現れる朱色の女。物語の神である。


「ただ、わたくしが神社の外に対して与えられる影響は微々たるもの。巫女魔法少女めがねっ娘としての力を与えると共に『事件に巻き込まれやすい』という性質をつけ加えた程度です。比較的嵩都高校が近いのでなんとか影響を及ぼせていますが、それで結果的に誰がどのように絡んでくるかまで因果を操作することはできません」

「つまり、どのような事件に巻き込まれるかは与り知らぬ、ということか」

「そうです。わたくしはきっかけを与えたにすぎません」

「となると、その解決は俺達で考えてどうにかしないといけない、ということですか?」

「物分かりのよい二人で助かります。その通りです」


 相変わらずの飄々とした態度で物語の神は答える。


「わたくしは飽くまで舞台装置。事件を解決するのはホームズとワトソン、巫女魔法少女めがねっ娘とその眼鏡、でなければ、成立しません。与えた力は巫女魔法少女めがねっ娘の物語を刻むためにあるのですから」

「うむ、大体状況は把握できたのじゃ。ありがとう、物語の神よ」

「どういたしまして」


 役目を終えたからか、それだけ言うと物語の神は姿を消してしまった。


「こうなると、やっぱり高瀬さんのことに関わるってことになるのか?」

「主は余り気乗りしておらんようじゃが、まぁ、そうなるの」

「いや、気になっているのは事実だからな。なら、俺が明日、様子を見てみよう」

「それがいいじゃろうな。われは放課後ここで結果報告を待つかの」


 そうして方針が決まり、今日のところは解散となった。

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