第13話 目的

    ◆




 少女は生まれながらに能力を持っていた。

 誰かのモノを奪える。

 そして他の誰かに与えられる。


 少女は周囲から嫌われた。

 疎まれた。

 妬まれた。

 怖がられた。

 恐れられた。

 利用しようとしてきた人もいた。

 でも、結局畏怖された。


 それでも。

 少女は自分に何が出来ないかを必死に探った。

 探った先に見つけた、一つの疑問。


 どうしてみんな、私を怖がるのだろうか?

 どうしてみんな、争うのだろうか?

 争うのはいい。

 だけど傷つけるのは何故だろうか?

 傷つけたら傷つけられるだけなのに。

 どうして、それでも止めないんだろう?


 そして少女はその疑問に対しての答えを見つけた。


 そうだ。

 傷つけられるのが私だけならば、みんな幸せなんじゃないか?

 恨むのも。

 恐れるのも。

 傷つけるのも。

 全部一人に集中させれば、その間、他の人には優しくできるのではないか?


 だから少女は選択した。

 他の人が自分以外を傷つけないようにするために。




 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る