第10話 過酷な旅路
◆
「ようやく魔王の居場所まで辿り着いたな」
「ええ。ここまでよく頑張ってきたわね」
「ボクのモノローグが台無しにされた!?」
二人の背中に言葉を投げる。
先のモノローグを思い出してほしい。
長き旅路。
本当に長い旅路になると確信して語っていたんだ。
それがどうだ。
あっという間に終わっていたよ。
まるで何話もすっ飛ばしたようになってしまったよ。
大丈夫。
間に何もありませんから。
お使いのモノに異常はありません。
異常なのはボク達の方ですから。
「何だセイ、忘れたのか?」
「ここまでの私達の過酷な旅路を」
「いや、忘れるも何もですね……」
ボクが反論する前に、アキラさんが振り返って口を開く。
「あの時だって――」
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「はっはっは。魔王軍幹部の河童のグジュール様にたてついたお前らが悪い」
「河童じゃなくてただの禿げじゃねえか」
「ゲーハーね」
「うぬ。僕の腹部よりやばい。あと服脱がせてください」
「頭のことをいじるなんて駄目ですよ、アキラさん、ハルカさん、ヤマモトさん」
「くっくっく……お前らひどすぎ……ぐすん……というかいいのか?」
「何がだ?」
「お前らの中に裏切者がいるってことも知らないんだな……くっくっく……」
「なっ」
「何ですって!?」
「そんな……」
「ボク達四人の中に裏切者が……っ!?」
「くっくっく……果たして誰なのかな……?」
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「一人増えてる! しかも裏切者が分かりやすすぎる!」
「ああ、あの時は大変だったな」
「ええ。そうね」
二人は神妙そうに頷く。
「まさかいつの間にセイが入れ替わられていたなんてね」
「えっ!? まさかのボクですか!?」
予想外の展開だ。
驚愕しているボクに対し、ハルカさんが首を縦に動かす。
「そうよ。ツッコミの切れがなかったことから、アキラが見抜いたんだから」
確かに振り返ってみれば、いつの間にか増えている一人に対して何のツッコミを入れていなかったし、おかしいところはあった。
……待って。
「いやいや! そもそも一人増えていなきゃツッコミすらしないじゃないですか!」
「矛盾、だな。俺とハルカだったら盾の方が強かったが」
「ニワトリが先か、親子丼が先か、ってことね」
「どう考えてもニワトリの方が先です!」
「まあ落ち着け」
ポンと肩を叩かれる。
振り返ると、そこには禿げ頭のおじさんがいた。
「あと服を脱がせてください。お願いします」
「誰だあああああああああああああああああ!」
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