1話
程なくして教室に入ると、昔からの友人の久山信彦と夕凪琴音が真っ先に俺の席にやってきた。
校門にぼーっとしながら立っている俺が見えたらしく信彦は「なんであんなとこで突っ立ってたんだよ、変なもんでも見ちまったのか?」と冗談半分で聞いてきた。
俺は「変なもんではないけど俺は天使と出会ってしまったかも知れない。」と返した。
「天使…よもやお前からそんなワードが出るとはな…悪いことは言わない、一回医者に行って診てもらおう。」と信彦は真面目な顔で言ってきた。
「余計なお世話だわ!とにかく俺は天使のような人を見たんだ!」と俺は赤面しながら答えた。我ながら恥ずかしい…。
そんな信彦と俺の会話を琴音は「相変わらず二人は仲がいいね。」と笑顔で見守っていた。どれだけ時間が経っても俺たち三人はいつもこんな感じでやってきている。
始業式を終え教室に帰り軽く担任からの話があり、初日が終了する。
あまり変わり映えはしない一日ではあったが新しい発見はあった。
やはり心の持ちようってのは大事なのだと感じながら帰り道を歩いた。
それから数日が過ぎ、やっと早起きな生活にも慣れ、いつものように学園へと足を運んだ。教室で信彦と琴音に挨拶を交わし、席に着く、ここまで何の変わりもない一日だ。
…只一点だけ違うところを挙げるとすれば、何故かこの狭い教室の、しかも端に位置する俺の席の後ろに一組机があることだろうか。
まさか転校生が来る…?
まぁでもそんなことがない限りここに机なんか置かないよね…と心の中で整理をつけた。
そんな心の葛藤をしている内に担任が教室に入ってきた。そして担任から連絡があるらしい。
「今日からこのクラスに新しい仲間が加わるぞ。」
クラスがざわつき始める。
全員薄々と勘付いてはいたがいざ来るとなると動揺を隠せないようだ。
担任がドアの向こうの転校生に声をかける。
そして、皆が注目する。
入ってきた人には見覚えがあった。綺麗な黒髪、雪のように白い肌、見間違えるはずもない。新学期初日に校門で見た少女だった。
そして少女の自己紹介が始まる。
「佐伯奏音です。今日からこのクラスでお世話になります。どうぞ、よろしくお願いします。」
彼女は深くお辞儀をした。そしてクラスは大きな拍手に包まれる。
「佐伯の席は…あそこだな。」と担任が指差したのは案の定俺の後ろの席だった。
やっと朝から抱えていた謎が解けて内心スッキリしている。
だがしかしそれ以上に…ドキドキが止まらない…。
まさかこの学園に転校してくるなんて夢にすら思わなかった。
俺は心の中で盛大にガッツポーズしていた。
そして同時にここからの学園生活が今までよりも楽しく、より充実したものになる様な気がしていた。
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