27日/52日 (1)
視点/金田 瑞奈
「どうだ、暮らしてみて。下界に比べれば不便かもしれんが、まぁ良い所だろう?」
コンコンと煙管の灰を落としなが目の前の男は言った。
「えぇ、そうですね。皆さん良い人ですし」
私はそう応えた。
「なら良かった。でもたまにはクリムに会ってあげてね。彼女、あれ以来部屋から全然出てこないのよ」
そうだ。
クリムさん、は亜美の記憶と心を持って生きているとあの白衣のお姉さんに聞いた。
あ、白衣のお姉さんとは雲雀さんのことです。
その雲雀さんが言うには、亜美が抱いていた櫻井への感情をどう処理していいか分からず悩んでいるとか言ってました。
そして亜美ちゃんが空に抱いていた感情。
「恋…ですか?」
「そうね、恋の病ってやつね」
だらけた態勢で煙管を吸っている男、めちゃめちゃびっくりしてる。
「まさか、ご主人。気付いてなかったんですか?」
「流石に気付いてないとか無いですよね、空亡様…。」
彼はおもむろに咳をした。
千歳さんのうっわーというドン引きした顔が痛々しい。
「ご主人、丁度あの人形師達も来ていますし。ご教授を受け賜わったほうが良いんじゃないです?」
「え、シャリ―さんですか?」
「えぇ、今庭で遊んでいるんじゃあないかしら。それと氷室も居るわよ」
そうなんだ!
「ちょ、私行ってきます!」
私は庭のある方へ駆けて行った。
シャリ―さんの話は面白いからなー、今日はどんな話をしてくれるんだろう。
実に楽しみだ。
「ほら、ご主人も行きますよ。立ってくださいな」
「えぇ、俺もかぁ?いいじゃん。というかそろそろ、婚約とかしてもいいんじゃないか?そんなに俺のことが嫌いか?」
「私はご主人の使用人なんですよ?好きでも駄目なんです!さぁ、行った行った」
空亡が立ち上がりのっしのっしと庭へ向かって出て行った。
「私が貴方と結ばれる訳にはいかないんですよ、分かっているんでしょう?馬鹿」
千歳はそう呟いた。
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