集光性の虫けら
目が覚めた。
いや、目が覚める前に意識はあったのでこの言い方では語弊が生じるな。
視覚情報が入ってきたのほうが適切か。
そして、その情報。
「信じられない…。」
手を動かしてみた。
見えないところにある右手がどのようにか動いて
ジャラ
と、いう金属音が鳴った。
鎖だ。
「なんで縛られてんの」
目の前には人影が、何人もの影があった。
「そこの人、僕が今どうなってんのか説明してよ。」
目の前の人影の顔が良く見えなかったためそこの人、と呼ぶしかなかった。
すると声がした。
「まずいな、この鎖じゃ持たないぞ…。あの人形師のところへ行くはずだ、絶対ここで止めるぞ」
男の声だ。
それに応えるよう何人かの声も聞こえる。
その中の一つが聞こえた。
「空。私が分からないの?」
影が僕にそう言った。
僕はその影にこう言ってやった。
「誰?見えないよ。ここの夜は随分と暗いんだね」
実際、前の人物の顔は全く見えない。
「おいお前。周りはどうなっているのか言ってみろ…。」
「え、?周りか、右の方から弱い明かりが何個かするだけ」
ん?何個か?
月は一つだろう。
いや、ここは確かこの世じゃないんだっけ。
そりゃ月が一つとは限らないか。
でも、何でそんなことを聞いたんだろう。
「…。空、今は昼間だ。」
なんだって?
「昼間?昼間だって?そんなはずはないだろ。こんなにも暗いんだ。ほら、早くこの鎖を解いてくれ」
僕は腕を動かした。
「おい馬鹿!止めろ!」
女の声。
「誰が馬鹿だって?」
鎖のガチャガチャなる音が聞こえた。
だがそれは暫くすると聞こえなくなっていた。
まだ鎖が解けたわけでもないのに。
「なんだ…これ」
僕は言った。
「空!止まれ!!」
止まれったって。
お前たちが鎖を外さなかったからこうなってるんじゃないか。
自業自得だ。
「自分の体を見てみろ!そこで止まれ!でないと私たちはお前を殺さないといけなくなる!」
僕を殺す?
やっぱり馬鹿はお前たちだ。
「仕方ない。魔導書を使う。魔導書!」
「374498だよ~」
「分かった…。往くぞ」
魔導書?三十七万…なんだって?
聞こえない。
聞こえない
何も
聞こえない。
く・・・そ・・・。
光へ
光へ
光の方へ
ㇶ…カ リノ…ホウ……へ
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