施設のジャンルはガワ

 「これ……、図書館じゃなくて、武器庫の間違いでしょ……」

 「あらやだ、対ヴァンパイア兵器たくさん」

 「図書館では静かにー」「シーッ!」

 「あ、ごめんごめん」「あら、ごめんなさい」

 ケイとキュラノスとニルテと杏奈の四人は、中心地区から少し離れた所にある無人の図書館に来ていた。といっても、そこで目にしたのは、大量の、近接、遠距離、どのモンスターに有効なのかを問わずに無造作に陳列された武器の山だった。当然、対ヴァンパイア用の武器もあった。ただし、持ち出せないようにしっかりとセキュリティが発動していた。

 「それで、歴史書を探すのですよね?」

 「うん、そうでなくても、昔から今に至るまでーみたいな感じのでもいいよ」

 「人手は多い方がいいから来たー!」「うん!」

 ケイとキュラノスは、ニルテと杏奈の元気の良さに顔をほころばせた。

 「それじゃあ、ここはモンスターは出ないし、手分けして探そう!」

 「おー」 「おー!」 「お、おー?」

 

 気合いを入れたのは良かったのだが、

 「……何で武器と違ってしっかり整理されているんだ……楽だけど」

 四人は、歴史書が並べられた棚から、かたっぱしから本をかっさらっていき、近くのテーブルに置いていった。

 「あ、そう言えば、ジャンゴさんが、ここに正体不明のモンスターが出没するって噂してましたよ。ひょっとして、それでは?」

 キュラノスの閃きは、

 「何で本をととのえるの?」 「なんでー?」 

 「うっ……確かに」

 ニルテと杏奈にばっさりと否定された。

 「利用者がしっかりしているから……じゃあ説明しきれないよね。ここまで几帳面にやるのは、ちょっと病的だし……っと、これで最後か」

 ドスン、と本をテーブルに積み直した。こうして、書籍山脈が完成した。

 「さて、と……ちょっと調べるのを手伝ってほしいんだ。キーワードは、『地下』とか、それに近い言葉ね」

 そう言って、ケイは山から一つ手にとって、黙々と本を開き始めた。

 

 夕方。

 「……」

 ペラリ、ペラリ、ペラリ、パタン。

 「……ダメか」

 ケイは、無念そうに言った。

 「皆、どうだった?」

 「ダメだった」 「ダメー」 「成果無し、です」

 三人も、残念そうに言った。

 「……片付けて帰る……ん?」

 かしゃん、かしゃん、かしゃん……

 「うん?」「ん?」「足音?」

 何処からともなく、どこか金属質の足音が響いてきた。

 「……」「やばくない?」「隠れよう!」「……?」

 やって来たのは、

 『申し訳ありません、閉館の時間となりましたので、外にでていただけませんか?』

 ロボットだった。マッチョマンロボットの佐藤と比べると、こちらはブリキのオモチャの様だった。

 「あ、はい……。あの、一人でここを管理しているのですか?」

 ケイの問いに、

 『はい、ここで、六十年間、全ての本の管理をしています』

 「すごい!」 「かっこいー!」

 『ありがとうございます、ぼっちゃん、お嬢ちゃん』

 「……とりあえず、出ましょう?もう、閉館なのですし」 

 キュラノスが言った。

 『本の整理は、私がやります』

 ブリキロボットが、それに続いた。

 「あ、そうだね……あ、ちょっとまって!」

 ケイが、ブリキロボットに向かって、

 「この図書館の本に、『地下』に準ずる言葉が入った本はありますか?」

 『はい、この図書館には――』

 『そのようなキーワードがある本は存在しません』

                 ―続く―

 

 

 

 

 

 


 

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