街並み

 「~♪~~♪」

 へたっぴな口笛を吹きながら、ケイは、露店が並ぶ通りを歩いていた。前には、ニルテと杏奈がいた。今日は、店の定休日なので、町の案内をしてもらっていた。

 「この辺りが、『露店通り』だよ。その日によって、色々な出店が出てるんだ。それで、この先に行くと『中心地区』に出るよ」

 ニルテが、観光ガイドの様な口調で言った。 

 「ふぅーん、なんというか、目移りしちゃって困る場所、かなぁ」  

 そんなケイの手には、何かの肉の串があった。食べながら話を聞いていた。

 「それにしてもこれ……何の肉なんだろ?おいしいけど」

 そう言いつつ、完食した。

 「二人ともー!置いてくよー?」

 杏奈は、いつの間にか遠くまで行っていた。

 「わあ、待ってよ!」「はーい、今行くー」

 二人は、杏奈の下へ駆けて行った。

 

 中心地区。 

 「うわぁぁぁあぁぁぁぁあ!?」

 ケイが悲鳴を上げた。目の前には、 

 「オ、コノアイダノハイタツシテクレタコジャン!」

 「ど、どうされました……?」

 この間プロテインや曼陀羅を配達したマッチョマン達がいた。出くわしてしまった。

 「イヤァアアアァァァァァァァァァァァァ!」

 落ち着くのに、暫く時間がかかった。

  

 「す、すいませんでした……」

 ケイは、マッチョマン達に謝罪をした。

 「いいえ、いいんですよ。流石にトラウマになっている面々に一度に会ったら発狂もしますって」 

 「本当にすいません……」

 中心地区の一角にある酒場で、子供三人とマッチョマン六人が談義していた。当然異様な光景なので、周りはざわついていたが、そんなのは気にしていなかった。

 「あの、佐藤さん、それに他の皆も、あんなにたくさんのプロテイン、なんに使ったの?」

 「あ、それ気になってた」

 ニルテと杏奈が、機械のマッチョマンに聞いた。

 「プロテインを作るために使った」

 佐藤の代わりに、狼男が簡潔に言った。

 「え?」 「ん?」

 「いや、だから……」

 

 マヤリオコの外。モンスターの前に、六人のマッチョマンが立ちはだかった。

 「ヒャッハァー!新鮮なプロテインだあー!」 「クラエ!プロテニュウム光線!」

 佐藤が右手をかざす。掌から、青い光線が放たれる。

 それを浴びた海老みたいな機械のモンスターが、プロテインになった。

 「吹っ飛びなさい!ステロイドバアァスト!」 仏陀の様なマッチョマンが、コークスクリューを繰り出し、巨大な猪の様なモンスターに叩き込んだ。直後、ステロイドになって爆発四散した。

 その後、残りのかわいそうなモンスター達は、大量のプロテインとステロイドと化した。

 

 「――てなことがあったわけよ」

 狼男は語り終えた。

 「えぇ……」 「納得ー」

 ニルテは困惑し、杏奈は素直に納得した。

 「……この世界、生態系が崩壊して、モンスターが蔓延っているのは当然の知識ですけど……モンスター、プロテインやステロイドになるんですか?」

 ケイの疑問に、 

 「良い質問だね、お嬢さん。俺達は特別なのさ。肉弾戦や光線でプロテインやステロイドをモンスターから量産できるのさ。どうだい?今夜、二人で一杯」

 狼男が口説き混じりに答えた。

 「ごめんなさい、お酒は控えていますので」

 ケイは、口説きをやんわりと断った。

 「それに、名前も知らない人と飲むのはちょっと」

 「俺かい?ゾルさ。狼男のゾル」

 「……ケイ・シーです。たぶん、人間です」

 二人は、名前を教え合った。

 「ア、オレ、佐藤。ヨロシク」

 ロボットも自己紹介をした。

 「私は、ダブツです宜しくお願いします」

 続けて、仏陀の様なマッチョマンが。

 「あ、俺オレンジ」「俺パイン」「俺ベリー」

 最後に残りの三人が同時に自己紹介した。

 「……ま、この面子を見れば、『たぶん』なんて思うわな」

 ゾルは、そう呟いた。

                 ―続く―

 

 

 

 

 






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