∟[小噺:会議は踊る、されど進まず]

「――――それでは、クラス会議を始める。

 議題は『マコトとコースケの関係について』。みんなも知っているように、二人はただならぬ関係のように見える。そこで皆の意見を聞きたい」


「はいはーい! ケイジョウ議長!」

「はい、フサギくん。なにか意見でも?」

「どっちかに気があるとしても即刻別れさせるべきだと思います! というより、別れさせます!」

「ふむ……それはなぜかね?」

「マコト姉さまは私のお姉さまになるお方だからです!」

「ふむふむ。最近フサギくんがマコトくんを慕って、彼女のラッキースケベ回避術を習っているのは知っている。だが、それは推奨しない」

「アァ?! なぜですか?!」

「フサギくんは、マコトと姉妹関係になりたいから、コースケとマコトが付き合うことが許せない。そうだね?」

「はい!」

「よく考えてほしいのだが、コースケとマコトがうまく行った場合、実際にキミの『お姉さま』になる。そうなると、キミは逆に二人の関係を応援するべきという結論に辿りつくのだが、違うかね?」

「…………」

「…………」

「……た、たしかにっ……?! え、で、でもぉ……! え?! う、うぎゃぁぁぁああああああああああ!!!」


 【フサギ、ドロップアウト】

 理由:葛藤により頭がパンクしたため


「……では、ほかに意見は」

「ん」

「はい、なにかな。白銀悪魔ハイデビルくん」

「マコトがあの変態野郎を倒す。そして、勝利したマコトと戦って、あたいが勝って最強になる」

「んんー! なんて脳筋! でも、その発想は嫌いじゃない!」

「お前、姐さんをバカにしてんじゃねーぞ! 姐さんはすげぇんだぞ! 脳筋だけど!」

「そうだぞ! 脳まで筋肉だけど姐さんはすげえんだ!」


 【悪魔の取り巻き(通称:小悪魔)、ドロップアウト】

 理由:姐さんからヘッドロックされたため


「えーそれでは、気を取りなおして、白銀悪魔くん。一応聞くけど理由は?」

「……ん?」

「いや、首を傾げられても困るが。最強になりたい理由というか、最強になってどうするのか聞きたい」

「最強になってから……」

「うん、そう」

「それは、……最強になってから考える」


 【白銀悪魔、ドロップアウト】

 理由:会議が進まないため


「じゃあ、次。あー、生徒会長は」

「……ふっ」

「どうせくどくどと鼻持ちならない話で長くなるから、飛ばしちゃって」

「!?」


 【生徒会長、ドロップアウト】

 理由:話が長い


「オシエ先生からはなにかありますか」

「んにゃ?! 私?」

「なんで驚いているんだ、この人」

「って言ってもな……個人的に迷惑かけてくれなきゃどうでもいいというか」

「担任なんだからもう少し関心を持って?」

「じゃあ……アレは阻止したいな」

「アレ?」

「アレだよアレ、セック…S○X…」


 【先生、ドロップアウト】

 理由:立場を弁えない問題発言により自主退職に追いこまれたため


「えー……議会も思ったより盛りあがらなかったので、最後にそこの本人たち、なにか一言」

「あの。その前に」

「はい、なにかな。マコトくん」

「議長さんはどうしたいとかはあるのですか?」

「お? 俺さまかい? ケイジョウさまは楽しめりゃなんだっていいぜ。全員が笑ってハッピーエンディング。それが俺さまの信条さ」

「ありがとうございます。では、さらに一つ質問なんですが」

「はいはい、なんっすか?」

「私たちがこの議会に参加しててよかったのでしょうか?」

「…………まぁ、薄々気付いてたけど、ダメだよね」


 【ケイジョウ、ドロップアウト】

 理由:そもそもこの議会が成立していないことに気付いたため


HRホームルームも終わったようなので、それでは私は帰ります。コースケさん。また明日」


 【マコト、ドロップアウト】

 理由:とくになし


 最後に教室に残された『コースケ』は思った。



 ………え、なにこのHRホームルーム

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