1転生目

?転生目[『コースケ』が監禁されている理由 ]

 目が覚めると、そこは真っ黒だった。


 それは、ひどい既視感デジャヴだ。あの女神の歪んだ笑顔が、笑い声が、聞こえてきそうな忌々しい空間だった。


 しかし、ここは単に黒いだけでなく、暗い部屋でもあった。

 よく目を凝らしてみれば、家具もドアもうっすらと見えた。

 身体も光を波打っていない。ただの肉体。

 湿気と熱気がこもった空間。

 全身の毛穴から汗が自然と滲んでくる。

 あの場所とは違う。

 現実の法則に従って存在している。


 現実―――げん、じつ?


 粘り気のある汗が、ぼと…ぼとっ……と落ちた。

 『現実』――その事実が、逆に恐ろしかった。


 その空間で、『コースケオレ』は一糸まとわぬ姿のまま椅子に座っていた。

 手足は……縄で幾重にも椅子と一緒に縛られている。さらに、その下では結束バンドのようなものでしっかりと固定されている。ちっとやそっと暴れたところでこの拘束は解けそうにない。


 『監禁』


 その二文字が頭に巡って、額から汗の落ちる間隔が短くなるのを感じた。


 ………ここは、ここはどこだ?


「あ、起きた?」


 暗い空間から、声がした。

 女性の、声。


 ………だれ、だ?


 闇に溶けながら、その声の主は吐息だけを漏らす。

 太ももになにかが触れる。意思を持って、這いのぼってくる、なにか。

 そこで初めて気が付く、――目のまえにいる、存在。


 闇に溶けた顔は見えなかったが。

 『コースケ《オレ》』を見て。

 うっすらと笑っている。


 それだけは、分かった。

 理解した瞬間、心臓が裏返りそうになるほど、胸を叩きはじめた。


 そんなことを知ってか知らずか。


「あは♥」


 目のまえの闇は艶めかしく、笑う。


ぁ♥」


 ………どうして、どうしてこうなった?


 熱を持った闇に閉ざされて、脳みそが蒸されていく感覚の中。これまでの経緯を、『コースケオレ』の人生を、振り返えらずにはいられなかった。

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