2転生目
2転生目[二周目の『コースケ』]
家を護る父と、子を想う母。
愛のある家庭に『コースケ』は生を受け、愛をはぐくむように、すくすくと育った。
そして、十二年目の今日、『コースケ』の人生におけるイベントが起きる。
深呼吸をひとつ、息を整える。
この日が来るまでの時間で、今までの
『スキン』のこと、『マコト』のこと、……そして、『女神』の目星まで。
本格的な決戦は個性能力が発現したあとになるだろう。『コースケ』の場合は十二歳。マコトの場合は十三歳のとき、と本人が言っていただろうか。
マコトと出逢うまでは大きな動きは避けたほうがいいが、それまではただ月日を浪費するだけ、とはさすがにいかない。
『コースケ』の日常のなかに、だれかのなかに女神が何食わぬ顔で溶けこんでいる以上、まず見つけ出さなくてはならない。
それには前世で得た情報を可能なかぎり活用する。
まず、前回では女神は世界法則に則って行動している。気まぐれ、とも思うが、その真意も分からないままだ。
女神の性格上、常日頃から『コースケ』の動向をどこかで見ていたはずだ。違和感なく『コースケ』を監視できる立場の人物である可能性が高い。それは、デートの日に裏付けが済んでいる。のちの女神の言動から二人でホテルから出るところを確認している。もっと言えば、あの場にいた人物が『女神』の最有力候補だ。あのデートは複数人からストーキングされていた。もしかしたらこちらが確認できなかっただけでまだいたかもしれない。
そこから目星をリストにしてまとめてみた。交友を積極的にはしてこなかった前回の『コースケ』にはある程度絞りこめた。ただ、これはあくまで有力候補であり、絶対というわけではない。なにかしら遠望から監視ができる
ただ、ひとつ確実なことがある。
マコトは自己の
そこから逆算して考えれば、少なくとも世界を滅ぼした直前に『コースケ』の近くにいた可能性が高い。
つまり、すでに女神を探る候補の優先順位は決まっている。
今日行われる人生のイベント。それが一つの起点になる。
「あのね、コースケ。話があるの」
「急な話で混乱するかもしれないが……」
朝食が並ぶ机の向こうに両親が『コースケ』に話しかける。
中等教育が始まるすこし前のこの日、『コースケ』には新しい家族が増える。
「お、お邪魔、します……」
玄関先には自分よりも一回り小さい少女が、さらに小さく体を竦めていた。腰までまっすぐ伸びた長髪や強張った肩が震えるほど、スカートの裾をぎゅっと握っている。
その小動物のような姿と出逢ったのは初めてではない。親族の集まりで互いに何度か面識がある。ただ、まだ小学生の『コースケ』には難しい話として説明をしてくれなかったため、実は彼女の境遇や家に来た経緯も詳しくは知らない。
母方の妹の娘という血縁関係に当たる従姉妹。フサギという名の少女――今日、彼女が『コースケ』の妹になるのだった。
そして、『コースケ』におけるもう一つの人生イベントが近日中にある。
数日後に控えてある、中学校入学。
ここで悪友ことケイジョウと出逢う。本格的に仲良くなるのはまだ後のことだが、要チェック案件だ。
コースケの妹『フサギ』とコースケの友人『ケイジョウ』―――この二人を最初に詮索する。
マコトに逢うまでにできるだけをする。ただでは逢わない。絶対になにかしらの情報を得て、来たるべき日に挑む。
………今度こそ、女神の好きになんかさせない!
…。
「……そう、私を見つけるつもりね?」
「ふふっいいわ♥ 私は前回と同じようにただ全力で隠れていればいい。そう、隠れて見ているだけでいい。それで、貴方は諦めてくれる。貴方は私のものになる♥」
「けど、同じ世界の同じ時間の同じ場所だからといって前回と同じ転生だとは思わないことね。過ごしたトキは決して無くならない。トキっていうのは思った以上に不可逆で、時計の針を逆回りに動かすように簡単にはいかない。『10』しか入れない場所に『11』は入れないように。無理やり『11』を入れようものなら、既にあったどれかが弾きだされるように。それが世の摂理」
「もう引き返せない。けど、世界は抗えば抗うほど、残酷に出来ているから。早くしないとすべてが終わっちゃうよぉ? 貴方のその行為が自分の首やあの女の首、世界の首までも絞めていることに気付いていないなんて………ああ、なんでどうして、こんなにもかわいいのかしら♥」
「ふふっ、貴方が私を狂わせるのがいけないんだから……♥」
「だ・か・ら♥ キミにはなーんにも罪はないけど、これは仕方ないことなの」
「だから、死んで? ……いえ、こう言ったほうが正しいかな? ……生きないで? 彼のために」
「ね、■■■■さん?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます