第八,九章 最強の審判(5) ー残照ー

 僕とミンコは、凄惨な戦場の余韻から目を背けるように、月を見上げていた。

 互いに腰を落としている。僕は脚を折り曲げて膝を空に向け、かかとを地面に押しつけている。ミンコは同じように折り曲げているが、脚を傾けて地面と平行にそっとくっつけていた。


「月が、きれいですね、アキラさん」


「うん」


「みんなでこうして……一緒に眺めていたかったです」


「うん……」


 言葉は続かなかった。

 代わりに、最後の仕上げに取りかかる。


「筆ペン、署名用紙」


 呼ばれたものが、ぽんぽんっと虚空に姿を現す。

 どちらも景品で交換してもらえる、簡素な品だ。

 縦長の白い紙に、すらすらと書き込んでいく。


『道路交通法違反』


 書き終えて、僕はミンコに視線を向けた。


「さあ」


「はい」


 僕が決意を込めた眼で訴えかけると、ミンコはそれに真摯な表情で応じた。

 彼女が自分の名を署名用紙に書き終えると……

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