第一章 開催宣言

 現代日本。

『祭り』の風景を思い浮かべてほしい。

 赤と白の縞々な提灯が並んでいて、出店がいっぱい出展している。

 広大な敷地を使った贅沢な祭りだ。

 時間は夜かもしれねえな。何せ空は真っ暗だ。

 橙色の灯りがいかにも祭りっぽい。

 中心部まではかなり歩く。

 そしてたどり着く。

 想像の3倍、いや4倍、いやいや……人によっては10倍はあるかもしれない広いひろ~い広場だ。

 中央にはいわゆるヤグラってやつが建ってるな。そう、提灯と同じように赤と白の縞々の布きれを巻いた、あの台だ。その台がやはり尋常じゃあない。なんと言っても馬鹿っぴろい広場の端まで見渡せるように建てられたんだ。高層ビルもびっくりだがな、まあそれは問題じゃあない。

 風が吹いたところでびくともしねえし、揺れやしねえ。

 そんなもん物理法則なんぞ無視した世界だと誰だって思うわな? 実際その通り。ここは普通の世界じゃあない。と言っても想像するような『異世界』とやらとは……悩むところだが違うとしておこう。


「さあ、この世界に招かれた参加者たちよ!」


 おっと、長々とすまねえな。ようやく誰かが喋り出したぜ。


「ぼくはこの祭りの開催者にして、この世界の全てを取り仕切る、いわゆる神だ!」


 こいつは、イカれてやがるな。広場に集まった万を超える参加者たちにゃあ、姿が見えねえだろうが、餓鬼んちょじゃあねえか。そいつが神ってか。んふふっ、参加者が見たら5割が笑って、4割が呆れちまう格好だ。残りの一割はどうしたかって? それが今回の物語の主役たちさ。あわてんな。


「君たちは自分を知っているだろうか! もちろん知っているだろう!」


 この餓鬼は何を言ってやがるんだろうな。俺もそう思うぜ。


「そう……君たちは、人間の犯した罪が人間の形を持って具現化した存在なのさ! 感じるだろう? 自身のなかにうごめく感情を!」


 なんてこった。

 この万を超えそうな人、人、人。こいつらは罪が人間の形になった存在だって!?


「この祭りでやることはたったひとつ! 互いに争い、最後の一人になることだ!」


 おやおや。物騒になってきたぜ?

 あっぱらぱーで楽しげなお祭りを想像していたやつぁ、用心だ。


「そしてただ一人となった優勝者の罪は、無罪となることを宣言しよう! どんな罪であろうと、優勝者の罪は、今後、人間界で無罪となる!」


 おいおい、待て待て待て、この神餓鬼。それじゃあ……


「優勝者には、人間界に一個の人間として転生し、やり直す権利も与える! もはや無罪となった罪を堂々と犯すもよし。犯罪に手を染めず、まっとうに生きるもよし!すべてが自由だ!」


 が勝っちまったら……人間界は――


(僕だけは勝っちゃ駄目だ!)


 おっと、どうやら俺と同じことを考えているやつがいるようだぜ?

 こいつが、人間の――俺たちの希望みたいだな。


 さあ、物語を始めようか。

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