神様と子供

杉崎 三泥

神様は世界に憂う

 学生である時分、テンプレではあるがファンタジーの世界には夢を見た。2度目の人生、スタートの時点で有り余る才能チート。そういったもののおかげで2度目の人生は驚くほどにイージーモードで。


 けど、中にはそうでもない話もある。チートを持ってるかと思ったら、持ってなくて一からスタート。世界を救う側が実は悪。よくよく考えれば2度目の人生だからと言ってイージーモードの保証なんてないのだ。転生が人間なんて限ってないし、もしかすればゴブリンスタートの可能性もある。そんな中でも楽々人生を過ごせるのは、もともと才能があっても生かし切れてなかった人だけだ。


 才能には身体的な、能力的なものもあるが精神的な才能もある。ごく簡単な例であれば、努力の才能だろう。努力というのはだれにでもできるというものではない。努力の道の途中でいくつもの苦難があっても、必死に耐え、目的に向かっていく精神力はその人自身の才能のなによりの証明だろう。





 さて、そういった話はここまでにして。


 私、八百万の神の一柱ひとはしら夢叶むきょうはかれこれいろいろな世界を見てきました。そして、数多くの世界の住人を別の世界へと飛ばしてきました。

 その世界に見放された、もしくはその世界に興味がなくなった一部の人々を別世界の神様に引き取ってもらい、バランスをとる。それが私のお仕事です。

 そんなことを数千億年単位でやっていると、もう大半の人は見飽きたもので。いい加減疲れました。変態から殺人狂、ありとあらゆる変な人もいれば、その世界での暮らしが、一瞬で不意になってしまった悲しい人もたくさん見てきました。各々が世界が悪い、というのが最初の頃はとても悲しい話に聞こえましたが、今では慣れてしまいました。もちろん、決まって悲しそうなふりはしますが。

 要は生まれる場所を間違えたのだと。ごく普通にあることなのだと。よくあるでしょう?商品の中に不良品が混ざってるなんて話。でもその不良品も別の人からすれば、もしかするとあたりなのかもってことですね。


 そして、今日という日がいつなのかわからなくなった時間の中で、今日も私はちょうどいい転生者を探してみます。親友の管理する世界がどうやら、怪しいらしくて、世界に反抗の意思を見せているということです。親友曰く、誰が、どれかはわからないために、現地に行って直接原因を取り除くしかないそうなのです。そういった役目は神様にはできないため、決まって天使を送り出すのですが、だめだったそうです。


 世界の崩壊はすなわちその神様の死を意味します。それはまずいので急いで安定した世界から転生によさそうな人間を探して助けてもらうことにしましょう。神の使いである天使は忠実ですが、お堅い性格でうまくいかない時は大抵天使の考え方が悪いのです。役立たずめ。



 さて…誰かいい人はいませんかね…。

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