第12話 旅立ち

(数日後の早朝)

アイネ:(伸びをしつつ)「旅立ちには絶好の晴天だ~~!」

ロイエ:(荷物を纏めつつ)「姫様、朝早いとは申しましても、あまり目立つ行動はなさらないで下さいね」

エイハブ:(にこやかに微笑みながら)「寂しくなりますなぁ」

アイネ:(エイハブに向き直り)「またこの国を訪れることがあれば、必ずエイハブ様の所に顔をだしますね」

エイハブ:「お約束しましょう。それと……、私のほうから、贈り物を」

アイネ:「贈り物?」

エイハブ:「ええ。国沿いの街道脇に行けば、わかりますよ」

アイネ:「?」



(エイハブに別れを告げて道を歩く)

アイネ:「エイハブ様の贈り物って何だろう? 何で街道脇?」

ロイエ:「行ってみればわかりますわよ」

アイネ:「ロイエは知ってるの?」

ロイエ:(フフッ、と笑い)「ええ。ですが、お楽しみ、ですわ」

アイネ:「? わけわかんない」

(国沿いの街道脇に差し掛かった時、見知った人物が脇道に立っている)

アイネ:(小走りに駆け寄り)「ジュリアさん?!」

ジュリア:(姿勢を正して礼をとる)

アイネ:「良かった~。お別れを言えなかったから心残りだったんです。(あ、もしかして、贈り物って、ジュリアさんとのこと?)」

ロイエ:「お別れを言う必要はありませんわよ、姫様。これから一緒に旅をしていく間柄なのですから」

アイネ:「へ?」

ジュリア:「エイハブ様から、これから先、アイネ姫様に付き従うように、とのご用命を受けました。今後とも、宜しくお願い致します」(深々と頭を下げる)

アイネ:「………エ? エエッッ……ッ!」(途中で口をロイエに塞がれる)

ロイエ:(アイネの口を塞ぎつつ)「ジュリア様、これからどうぞ宜しくお願い致しますわね」

ジュリア:「いえ、こちらこそ」

アイネ:(口を塞がれたまま)「ふぁへひ、ふぁふぁひほふふへふふぁ~~!(勝手に話を進めるな~~!)」

ジュリア:「アイネ姫様は、ワタシが従者ではお気に召さないでしょうか?」

アイネ:(目を丸くして首を振り)「そ、そんなことはないよ! ただ! 私なんかと同行していたら、命が幾つあっても足りないしッ。ジュリアさん個人の幸せを見つける機会だって!」

ジュリア:(満開の表情で微笑み)「それならば大丈夫です」

アイネ:「え?」

ジュリア:「『いつか、騎士として命を賭けられるほどの方にお仕えしたい』。ワタシの生涯の願いが叶いましたので」

アイネ:(何と言ったら良いのかわからずに押し黙る)

ロイエ:(アイネの両肩に手をおき)「ジュリア様の決意も固いものですし、覚悟を決めて下さいませ、姫様」

アイネ:(ロイエをジト目で見ながら)「………ロイエは知ってたんだよね」

ロイエ:「勿論! ジュリア様ならば姫様の同行者として不足はありませんもの!」

ジュリア:「これからも行動を共にするならば、「様」呼びではなく、お互いに名前呼びが良いのではないだろうか?」

ロイエ:「あら、そうですわね。それでは改めて」(ジュリアに向き直り、礼をとる)「これから宜しくお願い致しますわ、ジュリア」

ジュリア:(同じく礼をとり)「宜しく頼む、ロイエ」

アイネ:(額に片手をあてて、空を仰ぎ見る)

ロイエ:「それでは参りましょう、姫様」

ジュリア:「行きましょう、アイネ姫様」

アイネ:「………「アイネ姫様」、なんて呼び方は長いから、ロイエと同じ呼び方でお願い。………ジュリア」

ジュリア:(目を見開いた後、嬉しそうに微笑み)「…わかりました。姫様」



(姫と二人のお供の旅は、これからも続いていく………のか?)


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