第10話 決別
元恋人:(馬車に乗り込もうとしていたジュリアに声をかける)「ジュ、ジュリアッ!」
ジュリア:(無言で元婚約者の顔を見る)
元恋人:(どこか切羽っ詰まったような表情でシドロモドロしている)
元友人:(離れた所から、夫とジュリアの様子を忌々しそうに見ているが、止める素振りは見せない)
ジュリア:(その様子に合点がいったように艶然と微笑み)「…貴殿もバジル殿下とは懇意にしておられたな。これから大変だろうが、貴殿ならばこれからの苦難も乗り越えていけるだろう」
元恋人:「エ?! い、いや…!」
ロイエ:(元恋人には一瞥も与えず)「さあ、ジュリア様。姫様がお待ちなので、お早く」
ジュリア:「わかった」
元友人:(ロイエに向かって)「ちょっと! 夫とジュリアが話している時に横から出しゃばらないでよ!」
ロイエ:(とても不思議そうな表情で)「あら、優先事項は王族、というのは、どこの国でも同じと存じあげますわ」
元恋人:「そ、それは……」
ロイエ:「まさか、とは思われますが、ジュリア様からの口沿いで自分は今までの失態を免れよう………、だなどと、愚かなことはお考えではありませんわよね?」
元恋人・元友人:(揃って顔色を変える)
ジュリア:「ロイエ殿、二人はそこまで愚かな者ではないよ」
ロイエ:(口元に手をあてて)「あら。それは失礼致しましたわ」
元友人:(今度こそ馬車に乗り込もうとしたジュリアに、声を荒げる)「ジュリア! 貴方って、友人の危機も救わない、冷たい人間だったのねッ!」
ジュリア:(令嬢達から冷ややかな視線を向けられていることに気付かない元友人に顔を向け)「………そうだな。なにせワタシは、元恋人と友人から裏切られるほど冷たい人間のようだしな」
(ジュリアの言葉に周囲がざわめき、元恋人と元友人が青褪める)
ジュリア:(二人に顔を向けると)「もう会うことはないだろうが、幸多いことを祈っている」
(馬車の中)
ロイエ:(ジュリアとは向かい合わせで座りながら、腹を抱えて笑っている)「ジュリア様もお人が悪いですわ……ッ。あのようなことを暴露されて、これからの人生、幸の多いことなどございませんのに!」
ジュリア:(にこやかに笑いながら)「そうか? 全ては自分次第だと思うが?」
ロイエ:「まあ、その通りではありますけれど」
ジュリア:(笑いを収めたロイエに)「訊きたいことがあるのだが」
ロイエ:(まるで察知していたかのように微笑み)「何でしょう?」
ジュリア:「アイネ…姫、は、どこの国の……」
ロイエ:「南西に位置する大陸国、セリアルの姫君ですわ」
ジュリア:(目を見開き)「……?! だが、あの国の王女は御年十六になったばかりで………ッ」(そこで何かに気付いたように口元に手をあてる)
ロイエ:(静かな口調で)「今、ジュリア様が考えられていることが正解ですわ」
(それっきり、馬車内は静寂に包まれる)
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