第7話 他国も問題③

アイネ:「(……ロイエのことだから上手くやっていると思うけれど、やり過ぎないかが心配だわ)」(エイハブ達から少し離れた場所で飲み物を飲んでいたが、ふと、ジュリアが誰かに捕まっている姿が目に入る)「(あれは………)」(給仕からグラスをもう一つ受け取り、ジュリアの元に歩いていく)

元恋人:「しかし驚いたよ。普段とはまるで違う姿だったものだから」

ジュリア:(目線を彷徨わせつつ)「ああ……」

元友人:(敵意を隠そうともしない視線で)「それにしてもジュリアったら水臭いのね~。アスカン公とお知り合いなら教えてくれてもいいのに」

ジュリア:「いや……、ワタシもそこまで深い付き合いではないからな…」

元友人:「そうよね! ジュリアは王宮騎士でも平民だもんね!」

アイネ:「ジュリアさん」

ジュリア:「あ、アイネ殿…」

アイネ:(ジュリアにグラスを差し出しつつ)「喉が渇かれているかと思いまして。………そちらの方々は、お知り合いですか? (わかりやすいけどね)」

ジュリア:(グラスを受け取りつつ)「ああ…。友人の伯爵子息夫妻なんだ」

アイネ:「そうでしたの。お噂はかねがねジュリアさんから聞いておりますわ。お初にお目にかかります。あ、ジュリアさん、髪飾りが取れそうですよ」(ジュリアの髪飾りを直す)

ジュリア:「そう言うアイネ殿も、花が落ちそうだ」(アイネの髪に飾られた生花を直す)

(そんな二人の光景を、周囲の老若男女は惚けたように見ている。ただし、ジュリアの元友人だけは忌々しさと敵意を視線に隠そうともしていない)

アイネ:「(ふ~ん……。これはちょっと予想外かな。でも、おおよそは推察出来る。元恋人のほうは、ジュリアさんに劣等感を少なからず抱いていたんだろうね。普段は男装の麗人だし、騎士だもの。その隙を元友人がついた形だったんだろうけど、女性としての真価をジュリアさんが発揮したものだから、忌々しさもひと押しなんでしょう。………要するに、似た者夫婦か)」



(小走りに駆けてくる人物の姿を認め、元恋人が姿勢を正す)

第一王子:「すまない。用事が立て込んでいた」

元恋人:(一礼し)「バジル殿下、この度はお招きありがとうございます」

第一王子:(会釈で挨拶に答え、視線をアイネとジュリアに向ける)「………そちらの御令嬢は、確か病欠のアスカン公の奥方の代わりに来られたのだったな」

アイネ:(ニッコリと微笑み)「お初にお目にかかります、バジル殿下」

ジュリア:(アイネを隠すように前に出て)「アイネ殿は他国からエイハブ様の所に休養に来られたのです」

第一王子:「なるほど……」(舐めるような視線をアイネとジュリアに向ける)

アイネ:(表面上はにこやかな表情を崩さずに)「(気持ち悪い~~~。女好きとは聞いていたけど、あからさまじゃない。これがあの王太子殿下と兄弟なんて到底思えないわ~~)」

第一王子:「リグレットも普段の騎士姿と同じ人間とは思えんな。普段からそのような姿をしておれば良いものを」

ジュリア:「騎士という立場上、致し方ありません」

アイネ:「ジュリアさんは騎士姿でも、充分に素敵です。殿下もそう思われますよね」

第一王子:(アイネの笑顔に頬を染め)「そ、そうだな。ところで…、アイネ………、と言ったか。そなた、恋人はいるのか?」

アイネ:「(メチャクチャ直球だな、おい)いいえ、まだ良いご縁には恵まれておりません」

第一王子:「ならば、私の妻にならないか?」

ジュリア・元恋人:「「殿下?!」」

第一王子:「そなたのように美しい者は、相応しい場所に居てこそ輝くというものだ」

アイネ:(微笑みを崩さずに)「とても勿体ないお申し出ですが、私は他国の人間であり、貴族でもございませんので、お話はお受け出来ません」

第一王子:「側室ならば問題はない」

アイネ:(頬が引き攣るのを抑えながら)「(バカかッ、バカ王子なのか?! 確かに庶民でも貴族の養女という建前ならば側室になれるだろうけれど、そこに本人の意思を微塵も考えてないだろうがッ! それとも、断られないとでも思ってるのか?! どこまで自意識過剰なんだよッッ。それに、「他国」って単語が聞き取れなかったのか! 耳まで悪いのかよ?!)……ジュリアさん、パーティーが始まってから、どれぐらい経ちます?」

ジュリア:(慌てて時計で時間を確認し)「そ、そろそろ数時間は経過するかと……」

元友人:(喜色を浮かべた表情で)「ま~~あ! 殿下の問いかけを無視なさるなんて、どんな育ち方をされたのかしら?」

アイネ:(ジュリアが何かを言いかけるのを止め、微笑む)「そろそろですかしらね」



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