第6話 他国の問題②

(一週間後)

アイネ:(服装を整えながら鏡面を見ている)

ロイエ:「アイネ様! ジュリア様の仕度が出来ましたのッ! ご覧になって下さいな!」

アイネ:(ロイエの興奮状態に呆れつつ、ジュリアを見て目を瞠る)「ジュリアさん、綺麗~~………ッ!」

ジュリア:(藤色のドレスを纏い、頬を染める)「そ、そうでしょうか……」

アイネ:「(男装の麗人タイプの人は、反面女性らしい恰好をすると更に美貌が際立つって本当なんだな~~~!)」

ロイエ:「今日はエイハブ様のお供をジュリア様が、現アスカン公のお供をアイネ様が務められるのですから、存分に着飾らなくては!」

ジュリア:(困惑気味に)「しかし……、本当にワタシで宜しいのでしょうか?」

アイネ:(椅子に座り、ロイエに髪を整えられながら)「私は現アスカン公の奥様が体調を崩された、という建前でお供しますから、エイハブ様にはジュリアさんに付いていてもらったほうが都合が良いんです。(ジュリアさんがいなかったらいなかったで、ロイエにその役回りは回っていたと思うけど)」

ロイエ:(アイネの髪に生花を挿し)「それでは、参りましょう!」



(王宮の庭で開かれているガーデン・パーティーは、とても賑わっている。そんな中、アイネ達四人が会場内に足を踏む入れると、視線が集中する)

婦人一:「アスカン公様方ですわ」

婦人二:「現アスカン公の奥様は今日は体調不良で来られない、とお聞きしましたけれど………、あのお美しい御令嬢はどなた?」

令嬢一:「ねえ! アスカン公のお隣にいらっしゃるの、ジュリア様ではなくて?!」

令嬢二:「本当だわッ! いつもの凛々しいお姿とは違って素敵!」

(令嬢達が頬を染めて騒ぐ中で、貴族子息達もアイネとジュリアを伺っている)

子息一:「あの男勝りがあんなに化けるなんて……」

子息二:「今の内にお近づきになっておくのも悪くないかもな」

子息三:「アスカン公とも知り合えるかもしれないしな」

アイネ:「(コソコソ話しているようですが、全部聞こえていますよ~。本当にどこの国でも貴族は新しい噂になりそうなことやゴシップが好きですね~。………ハッキリ言って私は興味が微塵も湧かないですよ)」



王太子:「エイハブ殿、アスカン公! 久方ぶりだな」

エイハブ:「王太子殿下、お久しぶりでございます」(息子共々、一礼する)

王太子:「アスカン公とは王宮で顔を合わせる機会があるが、跡目を譲ったエイハブ殿には、こういった機会でしか会えぬのが残念だ」

アスカン公:「致し方ありますまい、殿下。それに、殿下はつい先日までは他国の王女を王太子妃として迎える準備にお忙しかった身。我儘を言っても始まりませぬ」

王太子:「そなたのように早々に娶ると決めた者がいなかったのだから、仕方あるまい。今日は奥方は不在で、エイハブ殿の知古の娘を伴うと聞いていたが………」(アイネとジュリアに視線を移し)「類まれなる美姫だな。まだまだ大人の段階を経ていくのだと思うと待ち遠しくもあり、恐ろしくもあるものだ。エイハブ殿のお供に付いているのは女性騎士のジュリア・リグレット、だったな」

ジュリア:(姿勢を正し)「ハ、ハイッ!」

王太子:「いつもは騎士姿が凛々しいが、やはり女性はそういった姿をしてこそ、真価を発揮するものなのだな」

ジュリア:(常に恐縮しつつ)「そ、そのようなことは……ッ」

アイネ:「(エイハブ様や自分の情報で知ってはいたけれど、本当にご立派な方。これが次の王なら、民や貴族も安泰でしょう。………私の故郷にも、こんな女姉妹が欲しかった)」

(王太子とエイハブ、アスカン公の話は続き、ジュリアは仕事をしている同僚に声をかける為に席を外す)



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