第33話 新たな恐怖5
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「夏子たちを見失っただと。それはどういうことなのだ」
夏子にも隼人にも鹿人の声が頭に直にひびいてくる。松本には聞こえていない。
三人は「ソレツ」と掛け声かけでドアに体当たりする。
「こういうことよ。鹿人」
驚く鹿人に松本が警棒を叩きつけた。
なんなくかわされてしまう。
鹿人の吸血鬼移動は敏速だ。
コマ落しの映画を見ているようだ。
隼人は橋に面した窓からアサルトライフルがつきだしているのを見た。
銃身は黒く塗られている。
田村がスナイパーだ。ほんとうに田村なのか?
隼人は皐手裏剣をなげた。
照準をつけていた田村の腕に手裏剣がつきたった。
ジュっと肉が溶けている。
田村は絶叫する。
床に崩れる。
傷口の腕からは肉の溶ける臭いがする。
煙がでている。
それでも、また再生するかもしれい。
もう一人いたRFがライフルに飛びつく。
「させるか」
隼人は手裏剣を取り出そうとする。
間に合わない。RFは標的に狙いを定める。
銃口からフラッシュ。
マズルフラッシュ。
閃光が煌めく。
隼人は銃声をきいた。
夏子の耳に銃声がひびいた。
松本は銃声に圧倒された。
まにあわなかった。
と、隼人、夏子、松本が同時に同じように感じた。
外で急ブレーキの音。
車のスキッド音がした。
激突音。
不吉な音が窓のそとで起きた。
夏子が宙を飛んでRFにとび蹴りをかます。
「撃て、撃ちまくれ。秀人を撃て。サタンのやつら皆殺しだ」
松本が鹿人に投げ飛ばされた。
鹿人が絶叫している。
窓から身をのりだして外を見ている。
まだ、間に合う。
まだ、秀人には銃弾はヒットしていない。
ふっとんだRFにかわって田村が溶けていく腕で銃架ににじりよる。
立ち上がる。
田村に迫る夏子と隼人を鹿人が邪魔する。
田村が銃身にしがみつく。
銃床が動いている。
微調整している。
夏子も隼人も近寄れない。
鹿人が妨害している。
夏子の髪が伸びる。
夏子の髪が田村の首を締める。
バチッと青白い光り。
スパークが田村の首回りで発光する。
田村は蒼白となる。
精気がぬけていく。
倒れる。
形が崩れ溶けていく。
一瞬で灰となる。
このとき部屋を揺るがす鈍い振動が伝わってきた。
普通の人では感じないような揺れだった。
大谷の方角だ。
神父だ。
神父がやったのだ。
松本が鹿人に体ごとぶちあたる。
よろける鹿人に夏子が叫ぶ。
「テロは許さない。たとえ、兄さんでも死んでもらいます」
目の前で田村が溶解したのを見ている。
始祖の直系の吸血鬼であっても……溶けるかもしれない。
恐怖が叫び声となる。
「やめろ!! ラミア」
夏子の髪が伸びる。
青白く光りながら髪が伸びる。
「ヤメロ!!!」
鹿人が消える。
一匹の蝙蝠がそこにはいた。
蝙蝠に変身した鹿人が窓から飛び出す。
そとには逃げずに壁を這い上っている
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