第13話 暴走族/バンパイァ3
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「ナンスんだよ。鬼島さん」
ケントがわめいている。
「ケント。そこまでだ」
「だってよ。リーダーをなぐることはナイスヨ」
鼻血がでた。高野はそれを舌でなめた。ぞくっとした。ねっとりとして塩気があった。汗と血の味。ウマイ。ゆらいでいる。ゆらいでいるのは高野の体だ。
廃屋といってもいい。長引く不況でがらんとした倉庫。バイクごと逃げ込んだ。何人かはルノーを追いかけていった。
この倉庫は高野のたばねる〈バンパイァ〉の巣窟となっている。
おれは、どうやらほんもののバンパイァになっていく。こんなことが起こるなんて信じられなかった。だいいち、この世にバンパイァが存在するなんて信じているものはいないだろう。
のどが渇く。渇く。ひりひりする。
これで血を吸えば、おれはバンパイァになる。
ケントたちにはなにもいっていない。仲間はなにも知らない。気づいていない。
めまいがふたたび襲ってきた。
「いままでドジったことはなかった」
サブのケントがいう。
「女のほうが、おかしい。ときどき体が浮くように見えた。浅田真央がジャンプしているようだった。四回転くらいしていたよな」
「イイ女だった。おれの女にしたかった」
ケントがワイセツに腰をシコシコと前後にゆする。おちこんでいる高野はだまりこむ。
おれの剣をかわしやがった。さすがだ。噂どおりの男。皐隼人。こんどは逃がさない。シトメテやる。憎悪の炎がめらめらと燃えあがった。
また鼻血が垂れる。
舌でなめる。うまい。
田村がにやにやしながら高野を眺めている。鬼島が田村を目でうながす。田村が寄っていく。
「このままでは帰れないな」
「でも、どうしてラミヤ姫があらわれたのだ」
「予想もしなかったことだ。鹿人さまに、処刑されるぞ」
「やだよ。そんなの」
田村がおびえる。
「灰にされるかもな」
「おどかすなよ」
想定外のことが起きている。指令どおりにことを運べなければ、消されてもしかたない。まさか、ラミヤが現れるとは。噂のラミアだ。マスターの部屋に写真が飾ってある。毎日、眺めていたラミヤだ。そり実物が現れるとは――。
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