5 夢旅行者? なんでもかんでも夢つけりゃいいってもんじゃないぞ!

 真っ暗闇のトンネルをくぐり抜けたと思ったら、ふたたび僕らはジュベール伯爵の部屋にたどり着いた。


「けけけ、一足遅かったな」

 僕らと見るなり、伯爵はからかうようにいう。


「遅い? まさか……」

「ああ、現れたよ、やつがね。そして夢をひとつ盗んで逃げていった」

「誰の、どんな夢さ?」

 ハルカが食いつく。


「夢主が誰かはわからない。たぶん、現実世界とはまったく別の姿になるタイプだ。夢はそうだな。『妖精の王国』ってところだな」

「妖精の王国?」

 僕は思わず聞き返した。


「けけけ、そうさ。この夢主は架空の世界を一から作り上げたんだ。その中の住人になるためにな。しかもおそらく持っている世界はひとつだけじゃない。無数にある」

「つまり夢旅行者か?」


 なんだよ、そりゃ? 夢怪盗、夢探偵、夢情報屋の次は夢旅行者かよ。なんでもかんでも頭に夢をつけりゃいいってもんじゃないぞ!


「つまり架空の世界や、実在するけどいったことのない世界に、遊びにいくことを生き甲斐にしているようなやつさ。こいつが誰かを特定するのはむずかしい。現実世界の情報があてにならないからね」

 橘今日子とは正反対のタイプだ。


「けけけ、こいつきっとまた狙われるぜ。なにせそういう世界をいくつも持っていそうだからな」

「だったら話は早い。あしたからその夢主の夢に入りこもう。そしてちんぷんカンガルー一族を待ち受ける」


 ハルカは楽しそうにいった。

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