第12話 集団X(エックス) 報告書
報告書 八月十日
一つ、「キラー」は触れた対象が「悪である」と判断した場合、その対象を抹殺できる。
一つ、「キラー」は触れた対象が「世間から悪と判断されている」と判断した場合、その対象を抹殺できる。
一つ、「キラー」は触れた対象が「悪である」という自覚を持っている場合、抹殺できる。
また、抹殺能力以外にも、「悪である」と判断した対象に視線を集中することで頭頂部から対象の硬直を促す電波を放つことができることが確認されている。その際に眼球に血液が多量に循環される模様。これは電波を放つために頭部に血液を集めた事で、微細な血管が集中する眼球に多くの血液が一気に流れたためと思われる。
「悪」と判断した対象からの攻撃による負傷は、触れることで急速に回復させることが可能。これは体内に侵入した「悪」を排除するという白血球に近い、無意識の無条件の防衛能力だと思われる。ただ、この回復方法はあくまで応急措置の回復術に過ぎない。この回復方法を行使して帰宅した「キラー」は四十六時間眠り続けた。リスキーな方法であるとみるのが妥当だ。
抹殺後の対象の消滅時間には個体差が見られるが、それは「キラー」の「悪」として対象を見るレベルの違いが関係している。
万物を抹殺できるわけでは無いことも発覚した。
先日、「キラー」と悪霊の戦闘が行われたが「キラー」の抹殺能力が機能しなかった。これは悪霊が既に死亡しているのが原因とみられる。その後、悪霊は「キラー」の血液には耐えられずに消滅。「キラー」の血液は通常の接触での抹殺とは一線を画している。冒頭に挙げた能力を凌ぐ、もはや別物の力を秘めていると考えて良いだろう。
結論。
「キラー」の能力は血液中に流れる力の根本を、自身の肉体を媒介として制御したものである。
我々は「キラー」の更なる活躍を期待する。彼の行き着く先こそが、我々の求める理想郷である。我々は「キラー」を先導者として見守り、成長させなければならない。「キラー」は自身でも能力を未だには理解していない。我々が「キラー」をこの世界の頂点に掲げるのだ。そしてその日は、決して遠くはない。
零時五十五分。現時刻をもって、作戦は次の段階へ移行する。
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