第5話 双丘

 そして、彼女の手はゆっくりと後ろに回された。背中の後ろで何かをしている。いや、何か、じゃない。あれは、ブラの、ホックを、外している……。

 とうとう、彼女の生乳なまちちを……。

「メーちゃん……」

 無意識に名前を呼んでいた。彼女は後ろに回していた手を下ろした。

 ……

 …………

 ………………

 ホックを外した後だったのか、ブラが少し浮いて、胸との間に少し隙間が出来上がっている。と言うか、下乳が見えそうに……。

「何?」

 その状態のまま、彼女は首を傾げて聞いてきた。しかし、俺も無意識だったから、何も言えない。でも、言わなくてはならない。


「メーちゃんって、何カップ?」


 とっさに出てきたのが、これだった。いや、これ、ダメだろ!どうする?誤魔化すか……?でも、どうやって……?


「……ィー」


 そんなことを考えていたら、小さな声で彼女が何かを言った。聞き取れなかったから、「え?」と聞き直したら……


「その、E、カップ」


 今度ははっきりとそう言った。

 大きいとは思っていた。でも、まさか、そこまでとは……。カップを言われても、はっきりとは分からないけれども、A、B、C、D、E、だ。5つ目だ。いや、だから、何だ。分からない。でも、俺の産まれて初の生乳がEなんだ!

 何がどうすごいのかは分からないが、とにかく、テンションが上がってきた!それと同時に、股間の膨らみも……、って、おい、待て、これ以上はさすがに……。


「やっぱり、拓斗くんも大きい方がいいの?」


 はにかむように聞いてくる。俺はそれに小さく、でもはっきりと頷くと、彼女は少し嬉しそうに、でも、恥ずかしげに笑ってくれた。

 そして、彼女は左手を右肩へと伸ばした。そして、肩紐を持つと、ゆっくりと右腕を抜いた。

 とうとうおっぱいが…………。

 いや、確かに見えてはいる、と言える、たぶん。なぜか、その前に黒いラインが……。あれは、髪の毛……?

 いつから、いつからあそこに髪の毛があった?最初は、全て背中側にあったはずだ!いつもそうだから、間違いない。なら、いつ……?

 キャミソールを脱いだ後だ。あの時、髪をいじっていたのは乱れを直していたのではない。横の方の髪を前に持ってきて、胸を隠すためだったんだ……。

 それに気づいた瞬間、俺は絶望した。俺の、人生初生乳が……。


 俺が生きる希望を失いかけている間に、完全にブラを外し、机の上に置いていた。ここからでもはっきりとその丸みが見える。

 そこに覆われていた未知なる双丘、いや、双山を見られないのか、と落胆した。

 しかし、彼女に目をやると、彼女の美しい髪は重力に引かれるように山の頂から麓へと下りていた。一部はまだ残ってはいる。しかし、大半は下山なさっていた。

 ということは、つまり、山の全容が、


 おっぱいが見えている!


 しかも、薄桃色に煌めく頂上までもが!


 しかし、彼女はそれに気づいていないのか、

「その、やっぱり恥ずかしいから、今はこれで。でも、その、拓斗くんが見たいなら、心の準備ができてからで……」

 そう言った。いや、今でも十分見えてますよ、とは言わず、「お願いします」と頭を下げた。

「うん」

 彼女は小さく笑いながらも、頷いてくれた。


 残るは一枚。パンツのみ。その下には、完全なる未知の領域。胸ならネット上の動画で見たことはある。しかし、そこは、そういった動画ですらモザイクがかかっている場所だ。いや、無修正動画ならモザイクはないらしい。しかし、それに手を出す勇気は俺にはなかった。だから、正真正銘、初なんだ。

 俺は、最後のその聖域、いや、性域を拝もうと凝視した。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る