七つの格言

メッセージ・1年生

 ユウが通っている初等学校は、彼女の家から歩いて10分ほどのところにある。ユウは卒園してから入学式の日まで、毎日母親と一緒に歩いていた。通学ルートを覚えるためだ。

 入学式があったこの日は、新入生全員の交流会が行われた。しかしユウは、幼稚園の時と同じように、他の人とはなじめずにいた。唯一の友達だったトオルは、この場にはいない。ユウには、不安しかなかった。

 1年生は、3つの組に分かれている。そのうちユウがいるクラスは、甲組と呼ばれており、他には乙組、丙組と呼ばれていた。

 学校生活を送っていたユウは、依然ひとりぼっちだった。給食の時間は、誰とも話すことなく黙々と食べていた。昼休みはほとんど図書室で本を読んでいるか、中庭の池をじっと見つめているだけだった。他の子と遊ぶことはあったが、それはクラス内イベントとしてであって、任意で遊ぶものではなかった。

 ある日の昼休み、ユウはいつものように中庭の池を見つめていた。池の中では、数尾の魚が群れをなして泳いでいた。

「おさかなさん、楽しいの……?」 

 なんのために、魚たちは泳いでいるのか。なんのために、まとまっているのか。ユウには、その答えが出てこなかった。しかし、ただその魚たちを見ているだけでも、彼女は満足していた。

 その時だった。突然、ユウは誰かに背中を押され、池へと落ちてしまった。池の水が冷たかったことと、池の底に頭を打ってしまったことが、彼女にとっては大きな苦痛となった。幸い池が浅かったため、何とか自力で池から出られた。しかしその後どうしたらいいのかわからなかったため、ユウはその場で大泣きした。

 たまたま近くにいた先生に助けられ、その日ユウは家に帰されることとなった。この事件について、彼女は誰かに突き飛ばされたと言ったが、先生は彼女以外誰も見ていなかったことを理由に、ただの不注意として判断した。

 ユウの両親は、娘がひどい目にあったことと教師たちの適当な判断を知り、再調査するよう申し立てた。しかし、再調査しても結果が変わることはなかった。


 この事件の犯人は、いまだ発見されず、また確証がなかったために、正しい結果は出ていないままとなっている。また、これ以降ユウは、様々ないじめにあうとは、知ってもいなかった。

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