第3話 お供物です
「・・・実際、様々な調査でも
人間の先生が黒板に凄い勢いで書きながら熱心に話している。
授業が終わりわたしは大きく伸びをした。今日の授業はこれで終わりだった。わたしは教室の後ろに眼をやった。修学旅行の写真が貼られている。南極へ行った連中は大型の野生の
そうそう、危険かも知れないと云われている盲目の偏執狂と云う人にも会った。別段危険でも何でも無く色々と教えてくれた。嘘か本当か昔は
話を戻して、修学旅行限定で無い写真だったら、一応、わたしもそれ也に自慢出来る写真も有る。教室の真後ろの壁は主に歴代修学旅行の写真と遠足などの写真だが、廊下側の壁は皆が持ち寄った写真だ。ドアのすぐ横にはTsathoggua様の子孫で白と黒の配置が逆転した
又、可成り古びてしまっているが壁の中央には貼られた写真では、隣のトラックより大きな橙色のカピバラが、鷲の如き背中の翼を開いたまま横に成り気持ち良さそうに眼を閉じている姿が映っている。わたし達の何年か前の先輩がアマゾン河流域の何処かで撮影して来た
そして、かく云うわたしも昨年、
で、大図書館だが、わたしは大図書館で知りたい事を知る事が出来た。わたしが知りたかったのはTsathoggua様の事だ。正確にはTsathoggua様の御前での作法などだった。
ついでに今、先生が騒いでいたTsathoggua様の系図についても調べてみたが、頭が痛く成って来て已めにした。この人、いや、この神様、一体何人お妃が居るんだ。
テストに出るならともかく、あんなに沢山のお妃の名前と特徴など憶える気に成れず、途中で放り出してしまった。時々想う。Tsathoggua様のお后について議論するよりCelaenoに行って調べれば良いのにと。まあ、精神しか行く事が出来無いから細かいメモも取れず、それで大方の研究者が諦めているのだろうが、一度に少しずつ記憶して戻ってくれば良いのでは無いだろうか。いや、本人の記憶だけでは学説の根拠や証拠に出来無いか。
それからTsathoggua様の御前迄行って粗相が有っても困るので、一応、現在のお后についても調べておく事にした。いや、その積りだったが諦めた。何しろTsathoggua様っておもてに成るのか女性遍歴が激しくて、
で、今もYhoundeh様がお妃かと云うと、それは無いらしい。それどころか、その後も様々な女神に押し倒されては何も抵抗されず、結果、膨大な子孫を記録に残す事に成ったのだ。いや、落とし仔達の子孫だけでも相当な数なのだが。何せ最初の落とし仔から数えて九十九代目と云う神様も居られるのだから。
兎に角、出た
Tsathoggua様は玉座で居眠りをこいて居られた。お妃らしい物の影は他に見当たらなかった。只、辺りに不定形の黒い影が何体もぐにゃぐにゃと蠢いている。
わたしが親父を引き摺って玉座の前迄進み出て口上を述べるとTsathoggua様は眼をお覚ましに成られて大層古風な挨拶だなと仰られ、面倒臭いからさっさと用件を述べてくれと続けて仰られた。そこでわたしは先ずお供物を差し上げようとした。ところがTsathoggua様は、つい少し前に
Tsathoggua様は暫しう~ん、と唸っておられたが憶えてないなあ~・・・と仰られたきり黙ってしまわれた。これは何やら面倒な事に成るのでは無いかと少し不安に成ったが、やがて、子供達に調べさせておこうと仰るので、しめたと想ったわたしは、それでは一応お供物を置いておきますので、お召し上がりに成られた頃にでも出直して来ますと云ってTsathoggua様に承諾して頂いた。何となくわたしが勢いに任せて強引に押し切った感じもしたが構っては居られぬ。それでお供物を置いて出て行こうとするとTsathoggua様に呼び止められた。
わたしがお礼を云って去ろうとすると、眼を覚ましたのか身動きをし始めたお供物の素性について訊かれた。取り戻しに来る者を警戒されておられるのかも知れぬ。それでわたしは正直に「父です」と答えた。するとTsathoggua様は、父だと、それでそなた困らぬのか、と訊ねられるので、そんな事は有りません、全然わたしの好きにさせてくれないし、少し前も男の子の所にこっそり泊まったら外出禁止だと云うし、挙句に夜は必ず帰って来いとか、居ない方が良いのです、とわたしはさんざん捲し立てて、ぐるぐる巻きに縛り上げた上に麻袋に押し込んで引き摺って来た親父を置いて、地上への帰途に着いた。
少女が出て行った後、Tsathogguaは呟いた。嵐みたいな娘だったなと。それから少女が置いて行ったお供物に眼を留めた。既に落とし仔達が中身を麻袋から引き摺り出していた。
「どうしようか・・・」
髭だらけで赤ら顔の知性の低そうな顔がこちらを向き、猿轡の下から盛んに呻き声を発している。見るからに汚そうな親父だった。
「まずそうだな・・・」
Tsathogguaはそう呟くと暫し黙考に入った。そして、どのくらい時が過ぎただろうか。Tsathogguaは「先ずは寝よう」と云ったかと想うとごろんと横に成ってしまった。
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