延長戦 樋口明雄が抜けてるぞ!

 かっぱくん。またWikipediaの推理作家一覧に穴を見つけたよ。

「誰が抜けていたんですか?」

 笹本稜平さんと並ぶ、冒険小説作家、樋口明雄さんだ。

「樋口さんの著作の一覧を見ていると、ゲームブックというものから始まっていますね。なんですか、ゲームブックって?」

 知らないんだ。あのね、最初のページはみんな読むんだけど。ページの最後に右に進みますか、左に進みますかみたいな選択肢があってそれによって次に読むページがかわってくる。テレビゲームのアドベンチャーゲームみたいなものだね。僕の子供の頃は大いに流行った。今は影も形もないけどね。

「ライトノベルも結構出してますね」

 これは活計たつきのために書いたんだろうね。でもさ、爆風警察 なんてさ、ソノラマ文庫から出てるけど、のちに朝日文庫で再出版されている。文才に溢れていたんじゃないかな。

「だから一般文芸に移ってきたんですね」

 そうだね。樋口さんの特徴としては山岳小説も書くけど、アクションものも書くってところだな。

「オススメはなんですか?」

 やっぱり、第二十七回日本冒険小説協会大賞、十二回大藪春彦賞を受賞した『約束の地』を勧めるのが無難だね。あと、山岳小説なら『天空の犬』なんかも爽やかで面白い。だけどね……。

「なんですか、もったいぶらずに言ってくださいよ」

 僕が一番好きなのは『紅の匣子槍シリーズ』なんだ。紅の匣子槍という、シリーズ名は親本の講談社版にはついていない。双葉文庫版でついたシリーズ名なんだ。今、三部作が揃っている。文庫は二冊で一部だから計六冊だね。

「どんな話なんですか?」

 えーと、忘れちゃった。

「ガクッ」

 でもねえ、たしか第二次大戦末期の中国大陸で女剣士みたいなのが活躍する話だよ。これが面白いんだ。樋口明雄ベスト1はこのシリーズだね。

「そう言いながら、内容は忘れている」

 読み返したくなる一冊、いや六冊だね。

「山岳小説から遠く離れましたね」

 僕は言ったろ。冒険小説の第一人者だと!

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