眠れない夜はミステリーを語ろう

延長戦 小路幸也はミステリー出身だよね？

　ねえ、かっぱくん。このWikipediaの推理作家一覧に小路幸也さんが入っていないよね？

「そうですね。入っていません」

　それっておかしくない？　小路さんはメフィスト賞出身者だよ。

「現在書かれているのがミステリーじゃないからではないでしょうか？」

　何を言う。どの作品にもミステリー要素が入っているじゃないか！

「そう、怒らなくても」

　ふん、僕は勝手に小路さんをミステリー作家に認定してしまうのだ。

　僕は小路さんのこと、ずっと読まず嫌いでいた。なぜなら、雑誌で見た小路さんの顔が「山下達郎とリリー・フランキーを足して二で割って、幽霊にしたようだった」からだ。ここに登場したみなさん、すみません。僕は「こんな暗い顔している人だから暗い小説を書くのだろう」と思い込んでいた。

　ところが、文庫担当のオバサンが「これ、面白いよ」と猛プッシュしてくるので『東京バンドワゴン』を買って読んだ。「なんだこの爽やかな連作短編集は」僕はびっくりして、次の『シー・ラブズ・ユー』を買って読む次第になった。

　それからは小路気違いになった。デビュー作の『空を見上げる古い歌を口ずさむ』は訳が分からなくてつまらなかったけれど、あとはほとんど、当たりだった。

　僕のオススメはシリーズ物ではないやつで『うたうひと』『猫と妻と暮らす 蘆野原偲郷』『東京公園』『COW HOUSE』『brother sun早坂家のこと』あたりかな。もっと面白いのがいっぱいあるけれど、入門者向けとして書いておこう。

　小路さんは多作だ。金のない僕にはもう追いつけない。ここらでちょっと落ち着いて『東京バンドワゴン』を超える作品を書いたらどうだろうか？

「辛辣ですね」

　ああ、かっぱくんいたのか。多作はね、赤川次郎先生や、西村京太郎に任せればいいんだ。あの二人は大天才だからね。僕はほとんど読んでないけど。