第30夜 若竹七海はビター&スイート?

 かっぱくん、そして読者の皆さん。申し訳ございません。

「ぺこりさん、どうしたんですか?」

 うん、前回の末尾に次回、つまり今回が最終回だと僕は言った。

「そうですね、華々しく、掉尾を飾りましょう」

 そう、言いたくなるよね。でもね、日本のミステリー作家一覧やその他の資料を見ていたら、書き洩らした偏愛作家がいることに気づいたんだよ。

「えーっ?」

 だからね、一応今夜を区切りの最終回にして、延長戦をやろうと思うんだけど。許されるかな?

「さあ、どうでしょうね」

 でも、この書き残した作家さんたちは僕にかなりの影響を与えている。ぜひ、述べたい。あと、偏愛とまではいかないけれど、何冊か読んだ作家さんもいる。彼らの事も触れたい気がする。許してよ。

「まあ、ここの主宰はぺこりさんなんだから、好きにすればいいじゃないですか」

 そうだよね。皆さん、お読みのように『眠れない夜はミステリーを語ろう』は今日で最終回ですが、延長戦を行います。「この嘘つき!」とか言わないでね。


 これでやっと本題に入れる。今日は若竹七海さんを紹介するよ。若竹さんは『ぼくのミステリな日常』でデビューしたんだけど、その前に立教大学在学中に、木智みはる名義で創元推理文庫の折り込み冊子『紙魚の手帳』で「女子大生はチャターボックス」という書評のコーナーを担当していたんだ。

「へえ」

『ぼくのミステリな日常』はいわゆる“東京創元社方式”のミステリーだ。かっぱくん、“東京創元社方式”は覚えているね。

「ええと、独立した短編だったものが最後に一つに繋がるんでしたっけ」

 正解。そのあと『心のなかの冷たい何か』『水上音楽堂の冒険』を出すんだけどこれが文庫にならなくてねえ。結局、『心のなかの冷たい何か』は十四年後に文庫になったけれど『水上音楽堂の冒険』は未だ文庫化されていない。だから僕は若竹さんをコンプリートできないんだ。悔しいな。


 若竹さんといえば、女探偵、葉村晶のシリーズと架空の都市、湘南あたりをモデルにした葉崎市のシリーズが有名だね。前者は必ず、葉村晶が肉体的にも精神的にもボコボコにされる、超ビターなハードボイルド。後者はコージーミステリーと言う、ユーモアたっぷりの物語だ。心臓の弱い方は前者は『プレゼント』だけにしておいたほうがいいかも。かなり、コテンパンにやられる。

「あとはオススメないんですか?」

 そうだねえ。『閉ざされた夏』なんかは江戸川乱歩賞最終候補だから本格しているよ。ただ、僕は葉崎市シリーズが好きだな。コージーミステリーだからユーモアやギャグがちりばめられていておかしい。ふんわりしたミステリーだね。あとは『製造迷夢』『スクランブル』なんかも面白いかも。一つ読んで面白かったら全部読むといいよ。重版未定だったものを光文社がどんどん復刊しているから割合入手しやすい作家さんだよ。

「じゃあ、読んでみます」

 そうだね。さあ、これで最終回も終了だ。

「でも延長戦があるんでしょ」

 そうそう、まずはこの人忘れて、僕的にはゴメンナサイという作家さんを紹介するよ。では次回、またお目汚しいたします。

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