第29夜 麻耶雄嵩をなぜ買っちゃう?

 この『眠れない夜はミステリーを語ろう』もあと二話になってしまいました。

「えーっ、どうしてですか?」

 偏愛作家がもう尽きちゃったんだ。僕、意外とミステリー歴浅いからね。西村京太郎先生や内田康夫先生なんてからっきしだし、西尾維新さんなんかのニューウェーブの作家さんも読んでいない。だから仕方ないんだよ。

「そこそこウケていたのに残念ですね」

 これが底辺作家の悲しささ。さあ始めよう。


 僕が麻耶雄嵩さんを知ったのは『文学賞メッタ斬り!』という本で、大森望さんが「新本格が生んだ最高の才能かもしれない」と書かれていたので、興味を持ったんだ。それまで麻耶雄嵩のまの字も知らなかったから、慌てて書棚を見たら『木製の王子』しかなくて、急いで、デビュー作の『翼ある闇 メルカトル鮎最後の事件』から『夏と冬の奏鳴曲』『痾』『あいにくの雨で』なんかを注文した。今では重版未定が多いからギリギリセーフのタイミングで麻耶さんの全著作を揃えられた。うーん、正直、これで満足って感じだな。

「内容はどうなってるんですか」

 包み隠さず申しましょう。全部、よく分からない。

「ええっ、それでなんで偏愛作家なんですか?」

 自分でもよく分からない。でも、読んでる最中は楽しいんだ。一体どんな解決になるんだろうってね。でも、いつも最後がちんぷんかんぷん。これって僕が馬鹿だから? だって、みんな絶賛するんだよ。「新本格最高の才能」なんだよ。だから文庫が出ると必ず買っちゃう。だけどみんなちんぷんかんぷん。すっきりしたこと一度もない。でも好き。麻耶さん。

「これは一種の中毒ですね」


 まあ、それはそれとして、軽くネタバレかもしれないが、麻耶さんのメイン“銘探偵”メルカトル鮎はデビュー作で殺されてしまう。でもそれ以降の本に平気で出演している。つまり、それらの作品は『翼ある闇』以前に起きたことのはずなんだが、最近の本には携帯電話なんかが平気で出ている。こうなると、『翼ある闇』で殺されたのが本当のメルカトル鮎かどうかさえ疑問を持ってしまう。そんなおおらかさというか、いい加減さも好き。


「完全に毒されていますな」

 ミステリーに完全を求めちゃいけないよ。名探偵の推理は可能性の中の一つだからね。

「意味、全然わかりません」

 そうかなあ。そういえば『貴族探偵対女探偵』が文庫になったんだ。買わねばよー。ルネッサーンス!

「ぺこりさんが発狂したのでこれで終わります。次回、最終回です」

 ヤッホー。

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