第24夜 蘇部 健一にしてやられた!

 今夜は台風が来ているから、とっとと行きましょう。蘇部健一さんの本は二冊しか読んでいないから、本当は偏愛作家じゃない。スルーしても良かったんだけど、一言文句を言いたいのでご紹介する。


「蘇部健一さんは第三回のメフィスト賞受賞者ですね」

 よく勉強しているんね、かっぱくん。

「いやそれほどでも」

 当然だ。ところで、受賞作『六枚のとんかつ』の事を多くの作家、評論家はなんと言ったと思う?

「さあ?」

『ゴミ』だよ。ゴミ。蘇部さんもショックを受けただろうな。その一方で絶賛する人も多かった。まさに賛否両論だね。

「どんな作品なんですか?」

 はっきりとは言えないけれど、脱力系のギャグミステリーだね。連作短編集と言っていいのかな。随分、前に読んだから忘れてしまったよ。でもどうしても忘れられないことがある。

「なんですか?」

 表題作の『六枚のとんかつ』の注意事項に島田荘司さんの『占星術殺人事件』のネタばらしがありますと、注意書きがあったんだ。僕はその頃、島田さんに興味がなくて『占星術殺人事件』を読むつもりはなかったので『六枚のとんかつ』を読んだ。それから十年して、僕は急に『占星術殺人事件』を読みたくなった。ワクワクして読んださ。ところが途中で気づいちゃったんだ、トリックに。まさに『六枚のとんかつ』で使われたトリックだった。僕は世紀の名作を悲しい思いで読み進めなくちゃならなかった。蘇部さん、あれはないよ。パクリじゃないか。僕の楽しい読書時間を返せ!

「まあまあ、落ち着いて」


 もう一つ、文句がある。『動かぬ証拠』という短編集があって、トリックが最後のページにイラストで描かれているキワモノなんだけど、その中の『変化する証拠』のオチが十年たっても分かりません。どなたか、お判りの方は、ぺこりの近況ノートに書いて教えてください。


 ところで蘇部さんは、現在児童文庫の方で、活躍しているようだ。頑張ってほしい。

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