第22夜 殊能将之も死んでしまった!

 かっぱくん、僕は呪われていると思うんだ。

「なんでですか?」

 偏愛する作家がどんどん亡くなってしまう。泡坂妻夫さん。北森鴻さん。今邑彩さん。まだ書けるのに死んじゃうなんて、神や仏は残酷な悪戯をしているのだと思う。僕に対してだよ。そのくせ、死にたい病の僕を殺すことはない。この世で苦しめと言っているようだ。そして唯一の楽しみの読書を奪っていく。殊能将之さんも亡くなってしまった。長期にわたり、僕たちに新刊を待たせながら。

「本人も無念に思っているでしょう」

 今はただ、冥福を祈り、来世で新作を読ましてもらうしかないね。


 殊能さんは『ハサミ男』で第十三回メフィスト賞を受賞してデビューする。これは叙述トリックメインの話だから内容には触れない。でも、ミステリーを読み込んでいる人ならタイトル見てわかっちゃうかもね。それはともかく、なかなか面白いミステリーでした。


 第二作の『美濃牛』から名探偵? 石動戯作が登場する。『美濃牛』はとっても分厚い文庫で、読みでがあるが面白い。横溝正史の世界のオマージュといった感じである。でもね、多分重版未定。古本屋で探すべきだろう。


 第三作の『黒い仏』は超問題作だ。内容には触れないようにするが、ミステリーの常識を逸脱して●●(アルファベットです)の要素が突然出てきて無理やり落とす。僕は好きだけど、怒って“壁ドン”した人も多いみたい。頭固いな。


 第四作の『鏡の中は日曜日』は僕が一番好きな作品だ。一見、館ものミステリーと思わせて、話がどんどん変わっていって、まさかの結末。

 僕は文庫読みなので『樒 / 榁』はこの本に併録されている。(ノベルス版は別作品)


 そして、事実上の最終作『キマイラの新しい城』これは、ちょっとミステリー要素が弱くてあんまり面白くなかったと、記憶している。


 これに、ミステリーランドの『こどもの王様』(げ、一月に文庫になってる!)

と『殊能将之 読書日記 2000-2009』『殊能将之 未発表短篇集』で殊能さんの作品はおしまいだ。もう読むことはできない。本当に悔しい。殊能さん、僕に取り憑いて新作書いてくれないかな?

「そういうこというと、また変なのにとりつかれますよ!」

 そうだね。気をつけよう。今夜はここまで。おやすみなさい。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る