第21夜 佐々木譲の大戦三部作は最高!

 佐々木譲さんは厳密に言えばミステリー作家じゃない。本格のミステリーなんて書いてないからだ。だから、正確には冒険小説作家、ハードボイルド作家、時代小説作家なんだけど、エンターテインメント全般をミステリーと呼ぶ、今の風潮に合わせて、ミステリー作家に位置付けよう。これは『このミステリーがすごい!』が作った風潮だと思う。そのアンチテーゼで『本格ミステリーベスト10』や『本格ミステリー・ワールド』が刊行されたんだな。

「そもそも、本格って何ですか?」

 いい質問だね、かっぱくん。僕も正確には分からないけど、事件が起きて、様々な謎が出てきて、それを名探偵が論理的に喝破し、真犯人を捕まえるものかな。

「論理的がミソですね」

 そう、だから僕はミステリーが書けない。破滅的だから。

「かわいそうですね」

「余計なお世話だ」


 さて、本題に移ろう。佐々木さんは『鉄騎兵、跳んだ』でオール讀物新人賞を受賞し、作家デビューする。この文庫は佐々木さんが直木賞を獲った後、復刊したから読めるよ。佐々木さんっていろんなジャンルの小説を書いている。コバルト文庫からも本が出ていたんだよ。今は読めないけどね。

「古本屋さんにあるんじゃないですか?」

 僕は古書が嫌いなの!

「神経質ですね」

 まあね。佐々木さんの小説は多いから、僕のお勧めだけを紹介しよう。まずは『ベルリン飛行指令』『エトロフ発緊急電』『ストックホルムの密使』の大戦三部作。これはどれも面白い。冒険小説好きなら全部読むべきだ。あと、個人的に気に入っているのは『鷲と虎』日米の侍スピリットを持った戦闘機のパイロットが戦いながらも……というお話だ。男なら読め。女でも読めって感じだわ。


 最近は佐々木さん、警察小説に移行している。僕は警察物、あんまり好きじゃないんだけど『警官の血』は面白かった。親子三代、大河小説だね。ハルキ文庫の『北海道警シリーズ』は最初の『笑う警官』はまあまあ面白かったけど、シリーズ化されて、だんだんつまらなくなる。僕、最後まで読んでないや。それより『蝦夷地三部作』が面白い。明治の北海道が舞台なんだけど、まるで、西部劇を読んでいるような興奮を味わえる。


 結論に入ると、佐々木さんは警察物より、冒険物が面白い。だからそっちを書いて欲しいな。でも警察物は今、人気だからどうしても警察物を書いちゃうよね。残念だなということです。


 ベイスターズ負けて機嫌が悪いからこれでおしまい。

「子供ですね。たかが野球ごときで」

 うるさい。お皿割るぞ!

「きゃー、やめて」

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